こだわりの強い子にはどう対応する?理由と対処法を解説

こだわりの強い子にはどう対応する?理由と対処法を解説

子どもの謎のこだわりにはばまれ、出かける時にひと悶着…ということはよくあること。特にこだわりが強い子の場合、どうしたものか悩んでいる親御さんも少なくないはずです。
ここでは、こだわりが強い子の理由と対処法を発達の専門家が解説します。

こだわりの強い子、こだわりの例

まずは、よくあるこだわりの例をいくつか見ていきましょう。

まずは、よくあるこだわりの例をいくつか見ていきましょう。

衣服へのこだわり

「今日は絶対この服で」というこだわりは、よく聞く話です。
小さいお子さんであれば、近所の買い物なのにプリンセスのドレスやアニメキャラクターの衣装が着たいと言い張る。着替えてくれるならまだよいかもしれません。パジャマでいたい、パンツをはきたくない、裸足でいたい、いや、むしろ裸でいたい!などなど。
学齢期のお子さんの場合には、親は毎日違う服を用意しているのに、いつも絶対同じ服で登校するというお子さんもいます。
制服の一番上のボタンがしめられない、ネクタイやリボンが結べないというお子さんの親御さんから、「毎日のように服装の指導を受けてしまいどうしたらよいかわからない」というご相談を受けたこともあります。
身につけるものにまつわる「こだわり」はバリエーションが豊富です。

外に出かければ人に見られるので、「どうしても譲れない」という気持ちは、子ども以上に親も同じ。制服があればなおのことです。あわただしい朝の時間、焦りもあり親子で言い合いになってこじれることの多いこだわりです。

食べ物へのこだわり

衣服ほど他者の目に触れることはないものの、悩みとしてご相談が多いのは食べ物へのこだわりです。
しいたけがきらい、トマトがきらい、野菜がそもそもダメ、酢の物やなま物がイヤ、冷たいものや熱いものがイヤ、醤油はいいけどケチャップはダメ、といった素材や調理法へのこだわりなど。好きなものしか食べないこだわりには、かなり極端な例もあります。
絶対にラーメンかハンバーグしか食べないと言い張られ、他の料理を用意すると食べない。ここまでの偏食だと、毎日のメニューが限定されますよね。入っている具材も変わることが許されないとなると、栄養がきちんと摂れるのかも心配になります。給食が食べられないというご相談もよくあります。

ルーティーンがある

朝のルーティーンがある、というお子さんもいます。
そのルーティーンがちょっとでも変わってしまうと、突然「出かけない」となったり、ずっと機嫌が悪いままだったり。
通学路も、毎日必ず同じ道を通らないと不安を訴えたりパニックになったりするといったケースもあります。

こだわる理由は感じ方の特性かも

こうしたこだわりと見えるものの中には、感覚の過敏さや感覚の統合がうまくできていないことが原因のものが相当数あります。

こうしたこだわりと見えるものの中には、感覚の過敏さや感覚の統合がうまくできていないことが原因のものが相当数あります。また、発達症特有の質である場合もあるでしょう。

ここでは、子どもがこだわる理由として

  • 感覚過敏の場合
  • 感覚統合がうまくいっていない場合
  • 発達症の特性の場合

の3つのパターンをとりあげ解説します。

感覚過敏の場合

「感覚過敏」とは、皮膚や耳、目、舌などで受け取る感覚刺激が人より敏感に感じられる状態のこと。
たとえば、衣服のこだわりと見えるものが実は、肌に触れる感覚の中に、どうしても受け容れ難い感触のものがあるという、触覚過敏が原因の場合があります。
動いた時に衣服のこすれる音がイヤすぎるという聴覚の過敏さが原因の場合もあります。

食べ物で言えば、食材や調理法へのこだわりが強いと思っていたのが、実は舌触りがどうしてもイヤだということも。熱さ冷たさを人一倍感じるといった、触覚の過敏さによるものであることもあります。また、噛む時の音がイヤだという聴覚過敏のケースもあります。
いずれの場合も、「本人にとっては受け容れ難い感覚なのだな」と理解することが大切です。

感覚統合がうまくいっていない場合

感覚の統合とは、皮膚や耳、目、舌を通して受け取る感覚刺激を整理整頓する脳の中の交通整理のことです。

「感覚の統合がうまくいっていない」というのは、感覚情報をうまく統合して処理・対処する機能が未熟であるということ。脳に入ってくるさまざまな刺激に対して、原始的な反応(生命維持のために身体の急所部分を反射的に守る行動)がブレーキをかけてしまっている状態です。

帽子や手袋、お面やマスクが着けられないというお子さんの場合、感覚の過敏さの他に、耳や頭、口元などを触られることを避ける反応が原因というケースがあります。耳や頭、口元はそこを攻撃されたら急所となり得る場所。原始的な反応が起こりやすい、本能的に「守りたくなる場所」なのです。

発達症の特性の場合

発達症の子どもが持っている特性は、「マイペース」「話が通じにくい」「しつこい」の3つに分けられます。
「絶対こうでなくてはイヤ」「絶対これがいい」というこだわりがある上に、それを「はっきりと主張する」「一方的に話す」「自己主張が強い」「自分の都合を優先する」といった特性が加わります。それが原因で、トラブルになったり誤解を受けたりしていることも少なくないでしょう。

こだわる子、親はどう対応する?

こうした感覚の過敏さや感覚統合の未熟さが原因の場合、言い聞かせることやしつけること、我慢させるなど「心がけ」は、何の解決にもなりません。

こうした感覚の過敏さや感覚統合の未熟さが原因の場合、言い聞かせることやしつけること、我慢させるなど「心がけ」は、何の解決にもなりません。
日本では「苦手な服だって、着続ければ慣れる」と考えられがちです。もちろん、その全てがいけないというわけではありません。
けれど、子どもの育ちにおいて、そのこだわりの背景に感覚の過敏や感覚統合の未熟さがあった場合には、むしろ、「受け容れ難い感覚を強要される体験」と記憶されることもあるでしょう。親子の間の愛着の形成に、傷がついてしまいます。
自分にとっての当たり前が、他者にとっても当たり前ではありません。感覚は人それぞれです。それは、我が子であっても、同じです。

具体的な対処法

親子といえども感覚は違うものであるということを大前提として、根気強く感覚の統合に取り組んでいきましょう。
原始系(生命維持のために身体の急所部分を反射的に守る行動)の反応は、成長とともに識別系(物事の全体性を理解し、自分に何が起こっているかを認識できる力)のはたらきによってコントロールされるようになります。諦めず、焦らず、がポイントです。

受け容れ難い感覚刺激は、できるだけ排除する

まずは、本人が受け容れ難い感覚刺激をできるだけ生活から排除していきましょう。
心地よく安心できる環境が家の中にあることは、感覚を休ませる意味でも重要なポイントです。

そして、肌触りや舌ざわり、音や味はどんなものなら受け容れやすいのか、受け容れられるのかを、本人に確認しながら探していきます。どの程度までなら受け容れられるのか、確認していくといいですね。
ネクタイひとつとってもそう。ぎゅっと締めるのが苦痛であれば、どのくらいまでなら大丈夫なのかを試してみるのです。

識別系のスイッチが入るようにしてあげる

例えばですが、酸っぱいものが食べられないのは、「酸味=腐っている」という、人間の生命維持のための防衛反応が強く残っていることが理由であることがあります。
けれど、親御さんたちが食卓でそれを美味しそうに食べているのを「見て」、それが何かということを「理解して」、安全だということがわかれば食べられるようになる。これは、原始系の反応が、識別系のはたらきによりコントロールされることの一例です。

「これはなんだろう?……」と、子どもが見て、確かめて、理解する。
その理解を手伝っていくことに意識を向けましょう。それは、無理に慣れさせることとはまったく違うアプローチです。

感覚統合に取り組む

家では、遊びやお手伝いなどを通して、本人が受け容れられるレベルの触覚刺激を入れたりさまざまな感覚刺激を体験したりといった取り組みをしてみてください。
感覚統合を目的とした運動療育を受けられる専門的な機関もあります。発達相談の窓口を利用するのもよいでしょう。

社会からの理解をとりつける

私たちは、子どもにも自分にも、社会に適応することを求めがちな傾向にあります。しかし「社会に適応させなくては」と思い行動するその前に、ひと呼吸して感覚過敏や感覚統合のことを思い出してください。しつけることや言い聞かせること、根性論ではどうにもなりません。

「うちの子はこういう特性を持っています」
「こんなことが耐えられないほどの苦痛に感じられます」
「これならば、受け容れられます」
といった具体的な情報を、お子さんに関わる周囲の大人たちに理解してもらえるようはたらきかけましょう。そのためにも、親御さん自身は、お子さんを理解する最初の大人のひとりになりましょう。
そして、社会からの理解をとりつける。助けてもらうために、情報を伝えることが大切です。

お子さんにも自分にも優しくなってください。
適応するべきは自分たち、という観念をいったん捨てましょう。
社会への適応と社会からの理解は、すべてまとめてひとつのことなのです。

特性を評価する

聴覚の過敏を持つ人の中には、その過敏さを持っているがゆえに苦労している方がたくさんいます。触覚の過敏、味覚の過敏もそうです。
けれど、見方を変え、その感覚の過敏さを適切に活かすことができれば、それは才能と言い換えることができます。
こだわりの強さも、ひとつのことに注力できるパワーとして正しく使われるようになるためにはどうしたらいいか。この視点をもって見ていくことが重要です。
国や文化、使いどころが違えば、高く評価される特性だからです。

最後に

こだわりの強いお子さんの、こだわりの背景には、感覚の過敏さや感覚統合の未熟さがあります。

こだわりの強いお子さんの、こだわりの背景には、感覚の過敏さや感覚統合の未熟さがあります。その視点を持ち適切な対処をすることは、お子さんだけでなく親御さん自身を楽にすることにつながります。
自分の不快を理解し、応えてくれる人がいること。
それが、親子の愛着を形作ることにつながり、お子さんがこの世界を信頼し、自信を持って生きていく礎になるのです。
どうぞ、周囲や社会に配慮することに使うのと同じかそれ以上に、お子さんや自分自身を理解し、幸せにすることにもエネルギーを注ぐことを忘れずにいてください。

文:いしづかみほ

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大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)

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