大切な子どもの歯を守るために、食習慣や歯みがきに気を配っている親御さんは多いと思います。しかし、医学・歯学の進歩によって、現代の「お口の常識」が、私たちが子どもの頃とは少し変わっているようです。
そこで今回は、数多くの子どもを診察してきた歯科医師の越智英行さんに、子どもの歯を守り、健康な口をつくる「お口ケア」を教えてもらいました。

歯科医師・日本口腔外科学会認定医 越智英行(おち・ひでゆき)
2010年、昭和大学歯学部卒業。2018年、昭和大学大学院歯学研究科臨床系歯科麻酔科学修了。現在は、医療法人社団「コンパス」の常務理事を務めるかたわら、東京の「コンパス内科歯科クリニック赤羽」で院長及び外来診療を担当している。
歯みがきはいつ、どうやって?
食事直後の歯みがきはNG
多くの人が食後の歯みがきを習慣にしていると思います。しかし、食事の後すぐに歯をみがくと、かえって歯を傷つけてしまう可能性があるのです。
食事の直後は、飲食物によって口の中が酸性になっており、歯の表面からミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」が起こりやすいです。この状態でブラッシングをすると、歯を傷つけてしまいかねません。歯みがきは酸性の状態が落ち着く、食事の15~30分後にしましょう。
学校の場合は昼食後に、歯みがきが出来ないこともあります。その場合、口を水でゆすぎ、食べかすを取り除くだけでも構いません。外出先で歯がみがけない時には、市販の「歯みがきシート」などを使うのも良いでしょう。
歯の隙間や生え変わりに注意!
子どもの歯みがきといえば、仕上げみがき。いつまで、どうやってやれば良いのか、悩んでいる親御さんもいるでしょう。子どもの発達にもよりますが、小学4年生くらいまでは仕上げみがきをしてあげると良いですね。
基本的には、子どもが自分で歯をみがけるようにして下さい。洗面所などで鏡を見ながら、みがき残しなく、しっかりみがけているかを確認する習慣を付けさせましょう。その上で親御さんが、明るく口の中がよく見える場所で仕上げみがきを行ってください。自分が影になるなどして、口の中がよく見えない状態で行うと、効果は半減してしまいます。
さらに、子どもの歯には大人とは違った特徴があります。例えば、乳歯の時期は、永久歯よりも歯に隙間があるので、汚れなどがたまりやすくなります。フロスなどを使って丁寧にケアしましょう。
また、生え変わってすぐの永久歯は柔らかく、虫歯になりやすいので、より気をつけてみがきましょう。特に、「6歳臼歯」と呼ばれる奥歯は、虫歯になりやすいので、生えてきたら特に気を配ってほしいです。
歯みがき以外に注意することは?
子どもの「お口の健康」を保つためには、歯みがきに加えて、生活習慣も重要です。虫歯菌は唾液で感染するので、歯予防のために、大人からの口移しや、箸やカトラリーの共有はやめましょう。
また、常に口に食べ物を入れているのも良くありません。「甘いものを食べると虫歯が出来る」と思っている人が多いですが、決まった時間内で甘いものを食べるより、だらだらとスナック菓子を食べ続ける方が、虫歯のリスクは高まります。延々とお菓子を食べたり、ジュースを飲んだりせず、時間を決めて飲食をするようにしましょう。
虫歯菌は口の中以外では生きていけません。また、口の中に、虫歯菌の「エサ」となる糖質が残っていなければ歯を溶かせません。つまり虫歯菌を口の中に入れず、糖質を与えなければ、虫歯が発生することはないのです。そのため、虫歯菌を「入れない」「活動させない」行動を心がけましょう。
歯科医院に行く頻度は?
正しく歯をみがく習慣が身に付いていても、歯科医院への通院は必要です。歯と歯肉の境目にある歯周ポケットの掃除などは、自分では出来ないからです。
子どもの場合には、歯が生え始めたら、歯科医院に通い始めましょう。ごく幼い頃から口や歯に触れられるのに慣れておくことで、その後の歯科治療やケアも受けやすくなります。
さらに、子どもの初期虫歯は黒くならず乳白色になるので、専門家以外は診断が難しいです。そのため定期的に通院し、歯の状態を確認する必要があります。乳歯の状態が悪いと、後々永久歯にも悪影響を与えます。「どうせ抜けるから」と考えず、子どものうちからお口の健康を保ちましょう。
歯科医師は虫歯の有無だけでなく、歯の生え方や生え変わり、あごの成長バランスなどを総合的にチェックします。健全なお口の発達のためにも、3か月~半年に1回は歯科医院に足を運ぶようにして下さい。
最後に
失った歯は再生しません。また、小さな頃からの習慣やお口の環境は、その後の健康にも影響を与えます。大切な子どもの歯を守り、口から健康をつくるためにも、知識をアップデートして、親子で正しい習慣を身に付けたいですね。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部