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月経前になると、ぼーっとしてミスが増えて、体も肌もなんとなく調子が悪い。パートナーや子どもについ怒ってしまうこと……。これ、もしかしたらPMS(月経前症候群)が原因かもしれません。
月経がある女性の50~80%は何らかのPMSの症状があると言われています。今回は、PMSの対策、症状を和らげる対策を医師監修の内容で解説します。

監修医:上田弥生(うえだ やよい)
産婦人科専門医。自身も10代の頃から月経前の心身の不調に振り回されてきたが、それがPMSだと知ったのは医学生になってから。漢方やアロマテラピー、心理療法などの知識をもとに、自身で「人体実験」しながらPMS対策を模索。東京都内のクリニックに勤務するかたわら、ニオイケアの専門家としても活躍。著作に「オトナ女子のためのスメらない手帖」。
PMSの原因と症状
PMS(月経前症候群)とは、月経前に起こる心と体の不調全般のことを言います。月経が始まると、症状が軽くなったり、なくなったりすることも。人によって、症状やタイミングはさまざまで、不調の程度も大きく違います。
PMSの原因ははっきりと解明されていませんが、月経サイクルにともなう女性ホルモンのバランスの変化によるものと言われています。
女性ホルモンには、エストロゲとプロゲステロンの2種類があります。エストロゲンは、妊娠に備えて体を整える働きのほか、肌や髪の調子をよくしたり、 丸みをおびた身体をつくるなどの作用があります。プロゲステロンは、妊娠の成立や継続に関わる働きのほか、体に栄養や水分を蓄える、基礎体温を上げる、食欲を増やすなどの作用があります。
排卵期から月経前にかけて、プロゲステロンが増えるため、さまざまな不調が生じると考えられてきました。しかしながら、PMSはさまざまな要因が複雑に関わり合っていて、現在でも不明な点が多くあります。

心の不調
感情のコントロールが難しくなり、落ち込みやすくなる、イライラしやすくなる、涙もろくなるなどの症状が現れやすくなります。
体の不調
お腹が張る、腰が痛くなる、胸が張る、体がむくみやすくなる、お通じや肌の調子が悪くなるなど、不快な症状が出やすくなります。つい食べ過ぎてしまったり、疲れやすくなったりすることもあります。
続いて、PMSで起こる心と体のつらい症状への対策を紹介します。出来るものから生活に取り入れてみてくださいね。
PMSの対策:体を動かす
PMSの対策として、体を動かすことが有効といわれています。月経前はプロゲステロンの影響で骨盤まわりの血流が滞りがちに。軽い運動をするだけでも血流や代謝がアップし、自律神経が整います。また、むくみを軽減することにもつながりますよ。
隙間時間やテレビを見ている時、寝る前などに少し時間をとって、体を動かしましょう。おすすめなのは、ストレッチやヨガ、ウォーキング。全身に血がめぐるのを感じられる程度に体を動かせるといいですね。
PMSの対策:食事に気を付ける
PMSの対策として、食事も大切です。食べ物の中には、PMSの症状に影響を与えるものがあります。PMSを悪化させるような食べ物は出来るだけ避け、軽減してくれる食べ物を積極的にとり入れていきましょう。
PMS対策:避けたい食べ物・栄養素

甘いもの
甘い物を食ると、血糖値が急激に上がり、その後、急激に下がります。血糖値が急激に下がることで食欲が増す、イライラするといった症状が現れます。
果物やケーキ、お菓子など、血糖値を急に上げる食べ物は出来るだけ避けるようにしましょう。
また、糖質は体に水分を溜め込みやすくするため、むくみもひどくなってしまいます。
カフェイン
カフェインをとりすぎると、イライラが増す原因に。PMSでイライラしがちな時は、コーヒーや紅茶、緑茶などカフェインが含まれるものはとりすぎないようにしましょう。
アルコール・喫煙
アルコールや喫煙も気分の変動に影響し、PMS症状の悪化に影響する可能性があるので、やめるようにしてください。
PMS対策:積極的にとり入れたい食べ物・栄養素
カルシウム・マグネシウム
カルシウムとマグネシウムは、情緒を安定させる働きがあるとされます。PMSで心の不調が出ている場合、積極的にとり入れたい栄養素です。
カルシウムは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、小魚、大豆製品などに多く含まれています。マグネシウムはひじきなどの海藻、アーモンドなどのナッツ類、ほうれん草、魚類、納豆や豆腐などに多く含まれています。
たんぱく質
たんぱく質には動物性と植物性がありますが、特に動物性のたんぱく質には鉄や亜鉛、ビタミンB6などの栄養素が多く含まれています。これらの栄養素はPMSを和らげてくれため、意識して魚や肉などを食べるようにしましょう。
複合炭水化物
情緒を安定させるためには、血糖値をゆっくり上げることが必要です。糖質も体にとって必要な栄養素ですが、甘いお菓子などは急激に血糖値を上げてしまいます。
その一方で、穀物類やイモ類、豆類などの複合炭水化物は血糖値をゆっくりと上げてくれます。
甘い物だけで糖質をとるのではなく、複合炭水化物を食事にとり入れるようにしましょう。
PMSの対策:生活を整える
PMSの対策として、生活リズムを整えることも必要です。生活が不規則だと、自律神経が乱れやすくなり、PMSを悪化させることも。子育てや仕事で忙しい時こそ、以下のことを意識してみましょう。
朝食をきちんと食べる
朝、食事をしないとイライラしたり、眠気が出たりするなど、PMSが悪化してしまうことも。温かい味噌汁やスープなど、少しでもいいので、毎日、朝食をとるようにしましょう。
睡眠をしっかりとる
睡眠時間が不足したり、寝る時間が不規則だったりすると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。寝る時間の1、2時間前に入浴して温まっておくと、寝つきが良くなる効果も。寝る前にスマホやテレビを見ない、夕方以降はカフェインをとらないなど、ぐっすり眠れるような習慣を意識してみてくださいね。
お風呂でゆっくりあたたまる
お風呂に入ると血のめぐりがよくなり、心も体もリラックスモードに。38~40度くらいのぬるめのお湯にゆっくりと入ると、自律神経の副交感神経が優位になり、血圧が低下し、リラックスした落ち着いた状態になります。心と体が緩められると、PMSのつらい症状も和らぎますよ。
PMSの対策:ストレスを軽減する

PMSの対策として、ストレスをためないことも重要なポイント。月経前は特にストレスを減らせるよう、自分を労わってあげてくださいね。ただ、「ストレスをためない」と言っても、難しいかもしれません。出来そうなことから、次のことを試してみましょう。
無理のないスケジュールを組む
仕事や家事、子育てに自分のこと……。毎日、やらなくてはいけないことが山積みかもしれません。でも、月経前はいつもより疲れやすく、焦ったり、ミスをしてしまったりすることで、ストレスもたまりやすい時期。スケジュールはつめ込みすぎず、余裕をもって取り組みましょう。
家族にPMSについて知ってもらう
月経前は家族のやることにイライラしがちになることも。つい口調がきつくなったり、不機嫌に見られたりすることもあるかもしれません。そうすると、家族間でいざこざが起こりやすく、さらにストレスが増す原因に。家族にもPMSのことを知ってもらえば、トラブルも防ぎやすくなるでしょう。
リラックスする時間をとる
ネガティブになったり、イライラしてしまったりする自分に気が付いたら、リラックス時間をとりましょう。アロマをたく、好きな音楽をかける、少し横になるなど、自分なりのリラックス方法を見付けてみてくださいね。
また、食事や嗜好品の工夫、運動、薬物療法に加えて、カウンセリングや認知行動療法も組み合わせていくと、より効果的です。さらに、マインドフルネスの瞑想プログラムが不安感や気分の落ち込みを軽くしてくれるという報告もあるので、この機会に取り組んでみてもいいかもしれませんね。
最後に
女性の多くが感じる月経前の不調、PMS。心や体は、どうしても月経サイクルに左右されがちです。PMSで不調を感じたら、セルフケアで自分を労わってあげましょう。ただし、PMSの症状が重い場合やなかなか良くならない場合は、早めに婦人科の先生に相談してくださいね。
文:荒井梨乃





