「塾の舞台裏」では、個別指導塾で多くの小中高生を指導している講師にインタビューしています。今回は、受験にも、将来にも役立つ「体験」について話を聞きました。

塾講師 金川俊也(かながわ・としや)
大学卒業後、会社員や事業の立ち上げなどを経験したのち独立。愛知県大府市に「個別指導塾アドバンス」を設立し、勉強のやり方と合わせて、未来を生きるためのヒントを子どもたちに伝えている。自身も小3と中2の2児の父として子育てに奮闘中。
半数以上が一般入試以外で大学へ
近年の大学入試では、総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜(旧推薦入試)での入学者の割合が増えています。2024年度の入学者のうち、国立大学では18.5%、公立大学では30.5%、私立大学では59.3%(※1)が総合型選抜・学校推薦型選抜によって入学。入学者全体で見ると、半数以上にも上っています。
大学入試において、総合型選抜・学校推薦型選抜での入学が増える中で、次の2つのことが必要になります。
・学力試験だけでは測れない力をつける
総合型選抜・学校推薦型選抜では、高校3年間における「評定平均が〇以上」などの条件があることが多く、高校1年生の成績から大学受験に影響します。そのため、定期テストや課題をおろそかにせず、苦手科目も含めてコツコツと努力を積み重ねていくことが大切です。
そして、部活動や委員会、ボランティア活動などの課外活動についての実績も問われます。ただし、「生徒会長を務めた」などの実績があっても、有利とは限りません。
教え子の中で、県内屈指の進学校でオール5の成績、部活動でもエースとして活躍していた生徒がいました。しかし、彼は「合格間違いなし」と言われていた大学の学校推薦型選抜で不合格に。その後、一般入試で合格をして、希望の大学に入学をしました。
一般入試で合格できるだけの十分な学力を持ち、部活動でも実績を残していた生徒でしたが、少し口下手なところがあり、それが面接において不利になったようです。
経験から「何を学んだか」
総合型選抜・学校推薦型選抜では、学業以外に課外活動の実績も問われますが、経験の大小よりも、そこから「何を学んだか」が大切。それを踏まえた上で「なぜ、この大学で学びたいのか」「この大学で何を学びたいのか」も見られています。
また、志望理由書や小論文、面接などにおいては、受験生の意欲や適性もはかられます。しかし、どれだけ素晴らしい経験をしてきていても、それが相手に伝わらなければ合格は出来ません。
日頃から自分の気持ちを言葉にする練習を進めておくとよいでしょう。また、入試科目に小論文がある場合は、しっかりと対策をしてください。
そして、何より大切なのは、やりたいことや学びたいことを明確にすること。心からやりたいことであれば、言語化もしやすいはずです。
夏休みは、積極的に「体験」を!
まとまった時間がとれる夏休みは、勉強も大切ですが、ぜひ新しい「体験」にもトライしてみてください。
親の実家に帰省し、「おじいちゃんが楽しそうに野菜を作っていたから、農業をやりたい」と言って、農学部を目指した生徒。入院している知人のお見舞いに行って「看護士になりたい」と決めた生徒もいました。テレビやインターネットでいくらでも情報を得られますが、自分の目で見て、聞いて、感じた「体験」にはかないません。
やりたいことや学びたいことがある生徒は、何らかの「体験」をきっかけに、その分野に興味を持ったというケースが多いです。
楽しく、生き生き働いている大人に会ったり、さまざまな経験をしたりすることは、将来を考えるきっかけにもなるはず。ぜひ、この夏は積極的に新しい場所に出かけてみてください。
※紹介する事例は、個人が特定されないよう一部改変して紹介しています
※1:「令和6年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(文部科学省)