- 投稿日
子どもを褒めて伸ばすか、叱って動かすか。そう考えた時、頭に思い浮かべるのはイソップ童話の「北風と太陽」ではないでしょうか。
毎日の子育ての中で、「太陽式」に褒めて伸ばした方がよいと分かっていても、時間がかかってしまいます。試行錯誤を繰り返すうち、「北風式」に子どもを叱って言うことを聞かせた方が早いと思えてきますよね。
今回は、子育てにおける「北風と太陽」の解釈についてお伝えしていきます。

一般社団法人シヅクリ 代表 山下由修(やました・よしのぶ)
静岡市内の小・中学校で勤務した後、市立清水江尻小学校の校長として、県内初のコミュニティースクールを創設、運営。また、市立大里中学校の校長を務めながら、フレックスタイム制の導入や校内フリースクールの開設、プロジェクト型の校内組織運営などに着手 。2019年、一般社団法人シヅクリを創設し、静岡を拠点に、人材育成に取り組んでいる。
上着を脱がせたのは太陽?
日頃の子育ては、どうしても「北風式」に寄ってしまいがち。子どもは「太陽式」が好きなのが分かっていても、なかなか難しいものです。
ここで、また違った角度からイソップ童話「北風と太陽」を眺めてみましょう。本当に旅人の上着を脱がせたのは太陽だったのでしょうか?
その決着をつけるため、通りかかった旅人の上着をどちらが先に脱がすことができるか勝負をすることに。
まず先に、北風が冷たい風を力いっぱい吹いて、旅人の上着を吹き飛ばそうとしました。しかし、旅人は上着が飛ばされないようにとしっかり押さえます。北風は旅人の上着を脱がせることが出来ません。
次に、太陽はさんさんと照りつけ、旅人を暖かく包み込みました。すると旅人は、自分から上着を脱ぎました。
よく考えてみると、旅人の上着を脱がせたのは、北風と太陽の共同作業だったとも捉えることが出来ます。
北風が頑張って風を吹いても、旅人の上着を脱がせることは出来ませんでした。また、太陽の力だけで脱がせようとしたら、相当の時間がかかったかもしれません。
つまり、冷たい北風の後に暖かい太陽の光を浴びたからこそ、旅人は短時間で気持ちよく上着を脱いだと解釈できるのではないでしょうか。
チームで育てる「共育」
子育てにおいて、私達は一人二役で北風と太陽を演じることがあります。しかし、優しさと厳しさを時と場で使い分けるには、かなり高度な技術が必要です。
そこで、チームで育てる「共育」が大きな力になるのです。チームスポーツでは、攻撃と守備の役割分担をしてチームを連動させます。子育てにおいても、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、おじいちゃん、おばあちゃんなど、その子に関わる家族はもちろんのこと。外部の人もそのチームの役割を担うことになると思います。
チームで「めざすべき子ども像」を共有して、北風と太陽、優しさと厳しさを皆で分担し、連動させていくべきではないでしょうか。
「逆境は成功の母」と言います。子どもには、厳しい北風に耐え、自ら暖かな太陽の日差しを勝ち取るような、たくましい子に育って欲しい。そこに山があるから登るのではなく、困難を乗り越えることに最大の喜びを感じるような、しなやかな子どもに育って欲しいと願います。
私が校長時代に取り組んだ、コミュニティ・スクールは地域住民が学校運営に参画する仕組みでした。わが子だけでなく、地域で、社会全体で子育てをするという視点を持って、大人たちが子どもたちに関わっていけることが理想だと考えています。
文:⼭下由修