「白雪姫」と「シンデレラ」の物語は、ご存知ですよね。この2つの童話は、「ある人」との出会いによって、誰もが本来の姿で輝けるようになると教えてくれます。今回は、子どもが本来の姿で輝くための方法についてお伝えしていきます。
一般社団法人シヅクリ 代表 山下由修(やました・よしのぶ)
静岡市内の小・中学校で勤務した後、市立清水江尻小学校の校長として、県内初のコミュニティースクールを創設、運営。また、市立大里中学校の校長を務めながら、フレックスタイム制の導入や校内フリースクールの開設、プロジェクト型の校内組織運営などに着手 。2019年、一般社団法人シヅクリを創設し、静岡を拠点に、人材育成に取り組んでいる。
人が本来の姿に戻るために
人は誰でも王子様・お姫様として生まれてくる。
しかし、魔法使いに出会ってカエルに変えられてしまう。
本物のストロークに出会った時、もとの王子様やお姫様に戻ることが出来る。
カナダの精神科医、エリック・バーンが遺した名言です。
「ストローク」とは、stroke(なでる)が語源で、「他者の存在を認識する全ての行為」を指します。
なでる、ほめる、抱きしめるなどの触れ合いや、愛情によって得られるさまざまな刺激、その人の存在や価値を認めるものを「肯定的ストローク」。殴る、叱るなどの否定するための言動や働きかけを「否定的ストローク」と言います。
エリック・バーンは、こうも言っています。
私たちは1人1人、誰もがかけがえのない存在として生まれてきた。
しかし、育っていくうちにどこかで ”自分は取り柄のないつまらない存在だ” と思い込んでしまう。
でも、自分のことを素晴らしい存在だと信じてくれる人が現れると、本来の姿に戻ることが出来る。
4つの「ストローク」とは
ストロークには、「無条件」と「条件付き」があります。
肯定的×無条件ストローク
ありのまま、存在そのものを認める
例:笑顔で挨拶をする、子どもの話を最後まで興味を持って聞く、優しく微笑みかける
肯定的×条件付きストローク
人の行動や態度などを認める
例:「良い成績をとってすごいね!」と褒める、「部屋を片付けてえらいね」と頭を撫でる
否定的×無条件ストローク
存在自体を否定するストローク
例:「バカ」と言い放つ、突然叩く
否定的×条件付きストローク
失敗した行為や欠点などを否定するストローク
例:遅刻したことを叱る、成績が悪かったことを責める
条件付きでも無条件でも、肯定的ストロークをもらえることはうれしいもの。しかし、これには落とし穴があります。
「肯定的×条件付きストローク」は、親が子どもをコントロールする時などによく使われます。そのため、条件付きストロークばかり与えられて育つと、子どもは自分の存在価値に自信が持てなくなることも。条件がなくなってしまうと、「自分はストロークがもらえなくなるのでは」と不安になってしまうからです。
また、条件付きストロークばかり与えられて育つと、親の観に価値観に反発し、反抗的な態度を示すようになることもあります。
さらに、「無視される」「話を聞いてもらえない」など、ストローク不足の状態「ノンストローク」が続くと、否定的なストロークでも求めるようになってしまいます。
「親にかまってもらうためにいたずらをする」「いじめられても、そのグループから抜けられない」などがその例です。
「肯定的×無条件のストローク」は、「自分は愛される存在だ」という気持ち、前向きに生きていくための自信を与えてくれます。これを惜しみなく与えることで、子どもはキラキラと輝き出します。大人同士のコミュニケーションにおいても、人間関係を良好にしていきます。
子どもを輝かせるストローク
私たちは皆、誰かに認めてほしいと思っています。
間違ったストロークやノンストロークで、無意識に魔法使いになってしまい、子どもをカエルに変えないようにしましょう。
本物のストロークによって、白雪姫やシンデレラのように本来の自分自身を取り戻し、子どもの輝きを引き出してあげてください。
文:⼭下由修