特定のものを食べると、腹痛や湿疹などつらい症状が出る食物アレルギー。三大原因とされる鶏卵・牛乳・小麦は、少しずつ食べて体を慣らすと、症状が和らぐ可能性があります。この治療に、お菓子やパンなどの加工品を活用する病院があります。
ドーナツなど少しずつ
2024年8月、愛知県の藤田医科大ばんたね病院。医師らが見守る中、中学2年の男子生徒(13)は、卵10分の1個ほどのアレルゲン(タンパク質)を含むクロワッサンを食べました。4年前まで卵を食べられませんでしたが、アレルギー治療で知られるこの病院に通い、チョコレートやドーナツなどを試して少しずつ克服。この日も無事に食べ終え、「見た目が卵と違うから楽」と話しました。
食物アレルギーの治療は一般的に、血液検査の後、疑わしいものを病院で食べる「経口負荷試験」で、症状が出るものや量を確認します。安全な量が分かれば、定期的に食べて、体を慣らしていけるからです。
治療をあきらめず世界を広げたい
ただ、ゆで卵など原因食品を「絶対に食べない」と言う患者も。つらい症状を思い出したり、味が苦手だったりするためです。こうした患者に寄り添い、治療の可能性を広げているのが、藤田医科大。スーパーやコンビニで買える加工品に含まれるアレルゲンの量を独自に調べ、4年ほど前から本格的に負荷試験に取り入れています。
使うのは、菓子やパン、冷凍食品など約120種類。医師が「安全に食べられるだろう」と判断したものを、病院で試します。同じ商品でも大きさや作り方によって、アレルゲンの量に最大で約10倍の差が出ることも。そのため、原因食品そのものを使う試験とは異なるリスクがあります。それでも、年間200件ほどの加工品を使った負荷試験を行い、患者が食べられるものを増やしています。
治療に関わる水谷公美医師は「ゆで卵がだめでも、食べられるお菓子はある。卵なんて一生食べない、という子たちの治療を諦めず、彼らの世界を広げたい」と話します。
気にせず食べられる商品も
食物アレルギーを気にせず食べられる商品も。日本ハム(大阪市)の「みんなの食卓」シリーズは、国が特定原材料に指定する8品目を使わず、専用の工場で作っています。特定原材料とは卵、乳、小麦、ソバ、エビ、カニ、落花生、クルミ。アレルギー症状が出やすく、重症化することもある食材で、国が指定しています。これらを使った食品は、パッケージなどに必ず表示が必要です。
「みんなの食卓」シリーズは2004年の発売時は4種類でしたが、今では17種類(9月7日時点)に。小麦粉の代わりに米粉を使ったパンケーキなどがあります。石井食品(千葉県)の「いっしょがいいね」シリーズも特定原材料は不使用。つなぎに里芋を使ったハンバーグが人気です。
医師に必ず相談を
加工品を使った食物アレルギーの治療は医師の指導が必要です。アレルギーのある人が、アレルゲンを含む商品を食べたい場合、必ず病院で相談してください。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年9月7日に掲載された記事を転載しています。