最近、お店に並ぶ米の価格が上がっています。昨年の猛暑で米の品質が落ち、流通する量が減る一方、海外からの観光客や外食する人が増えたことで、想定より消費量が増加したことが影響しているようです。
品質落ち 流通量減る
2024年8月初旬、愛知県名古屋市内にあるスーパーは、多くの買い物客でにぎわっていました。商品棚には、コシヒカリやひとめぼれなど、よく知られている米が並びます。米の仕入れ担当者は「6月から、10㎏の米を通常の値段より200円ほど値上げしました。仕入れる時の原価が高くなったので仕方ありません」と苦しい表情を浮かべました。
米の価格は、米を出荷する業者(全国の農協など)と、それを仕入れてお店に販売する卸売業者が、米の種類ごとに話し合って決めます。日本では、こうした方法で価格を決める取引が多いので、これが米の価格の目安になります。
農林水産省が毎月調査して、全国の平均価格を公表していますが、7月に発表された6月の平均価格は、米60㎏当たり1万5865円。昨年の6月に比べて2000円高くなりました。
外食など増え、需要は増加
「米も人間と一緒で、暑くて夜に寝苦しいと、ゆっくり休めません」。米の生産や流通に詳しい、日本国際学園大の荒幡克己教授は、品質低下の原因をこう説明します。昨年の夏に高温が続いたことで、粒が白く濁り、中身がスカスカになるなど品質に影響が出ました。すると、精米する時に砕けやすくなり、流通する量が減ってしまったのです。
さらに、新型コロナウイルスの流行が収まり、外食する人が増えたこと、日本を訪れる外国人客数が回復したことで、米が必要とされる量(需要)と流通する米の量(供給)のバランスがうまくとれなくなりました。それが「米不足」の状況に拍車をかけています。
そもそも、日本は人口が減っています。主食にパンや麺類などを食べる機会が増えて、米の需要は1年に10万tのペースで減っていました。そのため、米の生産量を調整していて、米を作る作付面積が年々減っていました。こうした状況も背景にあるようです。
「在庫はあるので安心して」
荒幡教授は「品質低下といっても、野菜で言えば『形が悪い』という程度。おいしく食べられる米の在庫はあるので安心して」と呼びかけます。ただ、今年の新米が出回り始めても、流通が落ち着くまで時間がかかりそうです。「価格が通常に戻るのは11月頃になるのでは」と予測しています。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年8月17日に掲載された記事を転載しています。