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ヘビが怖いのは、うろこのせいなんです――。そんな研究成果を、名古屋大大学院の川合伸幸教授が発表しました。その背景には、人間やサルなどの霊長類は、「天敵」であるヘビのうろこを早く察知することがあるようです。
ヘビは霊長類の天敵
霊長類の祖先は約6500万年前から、木の上で生活するようになったといわれています。当時、霊長類を唯一捕まえて食べることができたのが、ヘビでした。現在も、ヘビにかまれて亡くなる人は世界で大勢います。
川合教授によると、ヘビを見たことのないサルや人間の幼児は、ヘビの写真を他の動物の写真よりも早く見つけることが、これまでの実験などで分かっていました。しかし、ヘビのどのような特徴に反応しているのかは解明されておらず、うろこのほか、足のない細長い体やニョロニョロした動き、体の色などが要因として考えられていました。
見分ける時間が生死を分ける
川合教授はヘビのうろこに着目し、本物のヘビを見たことのない、研究所で飼育されているニホンザル3頭を対象に実験。動物が写っている9枚の白黒写真から、1枚だけ別の動物を選ばせました。8枚のイモリから1枚のヘビを選ぶ場合と、8枚のヘビから1枚のイモリを選ぶ場合を比べると、8枚のイモリから1枚のヘビを選ぶ場合の方が、見つける時間が3頭とも早くなることが分かりました。その時間の差は傾向としてわずか0.04~0.05秒程度でしたが、ヘビが相手では「生死を分ける時間」になるのだそうです。
へびのうろこの画像を合成させたイモリの写真(川合伸幸教授提供)
さらにうろこが重要であることを確かめるため、川合教授はイモリの体にヘビのうろこの画像を合成した写真を使って、同じ実験をしました。見つける早さを比べてみると、2頭はヘビの写真を選んだ時間と同じで、1頭はヘビよりも早く、ヘビのうろこをつけたイモリを見つけました。川合教授は「独特の動きや細長い形ではなく、うろこに対して敏感に反応していることが分かった」と話します。
サル被害防止に?
川合教授によると、霊長類はヘビのうろこをいち早く察知できるよう、ものを見る感覚である視覚を進化させてきたと考えられます。今回の研究が「野生サルによる農作物被害の防止にうろこが役立てられるかもしれない」と期待を込めます。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2025年2月15日に掲載された記事を転載しています。