「塾の舞台裏」では、個別指導塾で多くの小中高生を指導している講師にインタビューをし、実際にあった事例を紹介しています。今回は、学びにおける「基礎の大切さ」について聞きました。
塾講師 金川俊也(かながわ・としや)
大学卒業後、会社員や事業の立ち上げなどを経験したのち独立。愛知県大府市に「個別指導塾アドバンス」を設立し、勉強のやり方と合わせて、未来を生きるためのヒントを子どもたちに伝えている。自身も小2と中1の2児の父として子育てに奮闘中。
個性が大切と言われるけど……
近年は、今まで以上に「個性を育むことが大切」「その子らしさを伸ばすことが大切」と言われるようになりました。私もこの考え方には大賛成です。しかし、この「個性」や「自分らしさ」を間違えて捉えてしまうと、その子の良さを伸ばすことが出来ないと感じています。
塾で指導している際に、教えた通りに取り組まず、「自己流」で問題を解こうとする生徒がいます。計算の順番を無視したり、最後まで問題を読まずに勝手に想像して答えを書いたり。
ある意味、自由にのびのびと取り組んでくれてはいるのですが、テストや試験に関しては「自己流」で回答してしまうと、当然のことながら問題は解けません。そして、成績を伸ばすのも難しくなってしまいます。
基礎の上に応用がある
例えば、ピカソの個性的な絵を見て「下手だ」と思う人がいるかもしれませんが、ピカソはデッサン力も非常に高いです。ピカソの個性的な絵は、確実な技術力の上に成り立っているということが分かるでしょう。
茶人、千利休が提唱した「守破離(しゅはり)」という言葉を聞いたことがある人も多いはず。茶道をはじめとした芸道や芸術で大切だとされたプロセスで、具体的には次のようなものを指します。
破(は) :既存の伝統や規則に、自分なりのアプローチを加えていく
離(り) :最終的な段階で、師匠から独立し、自分の道を切り開く
この考え方は学習においても非常に重要で、基礎をおろそかにする生徒は伸び悩むことになります。
基礎力をつけるおすすめ勉強法
学力の基礎を身に付けるためにおすすめしているのは「音読」です。「〇文字以内で答えましょう」「文章中の言葉で書きなさい」などの設問を読み飛ばして回答したり、読解力が足りなかったりする生徒に特に効果的だと感じています。
文章を目で追って、声に出して、自分の耳で聞く「音読」は、視覚と聴覚の両方が刺激されます。それによって、文章の理解が進むので、音読を繰り返すことで、読解力が上がっていきますよ。
読解力は、国語だけでなく全ての教科に必要な力です。そして、子どもの個性やその子らしさを最大限伸ばすために、ぜひ基礎を大切にしていってください。
※紹介する事例は、個人が特定されないよう一部改変して紹介しています