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きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、少年院や少年鑑別所、刑事施設(少年刑務所など)で、罪を犯した少年たちが健全な社会人として改善更生し、社会復帰できるよう指導や教育を行う専門職、法務教官です。中でも、愛知県にある瀬戸少年院で勤務する職員の方に話を聞きました。
この仕事を選んだ理由は?
大学の講義で、非行少年の自立支援をしているNPO法人「陽和(ひより)」の方の話を聞いて興味を持ったのがきっかけです。
近所に住む、幼稚園時代からの友達が知的障害を抱えていたことで、何となく福祉や心理学に興味を持っていました。そのため、大学は福祉関係の学部に進学したのですが、学んでいくうちに「自分のやりたいのは、福祉の仕事ではないかもしれない」と思い始めていました。
そんな時に、出院者(少年院に入っていた人)がNPOの支援を受けて起業をしたという話を聞いて、心を動かされ、自分もその活動に参加することに。そこでの活動を通して、少年院などで働く法務教官という職業を知り、目指すことにしました。
仕事内容は?
瀬戸少年院で法務教官として勤務し、非行少年の教育に携わっています。
ある日の流れ
※日勤の場合
8時 出勤
少年の日記を読み、前日の様子や心情面の変化などの状況を把握します。
8時30分 職員の朝礼
前日からの引継ぎや連絡事項の共有などをします。
9時 生活指導(新入時行動訓練)
入って間もない少年に対して、院内での行動様式やルールを教えます。
12時 昼食
食事中も、指導の一環として箸の持ち方や食事マナーなどを教えます。
13時 職業指導(陶芸実習)
班ごとに分かれ、ICT(情報通信技術)技術科、製品企画科(陶芸班、園芸班、農業班)、生活関連サービス科(洗濯班)などの実習で技術を学び、社会人に必要な能力や働く習慣を身に付けます。私は陶芸班の実習を担当し、技術面の指導だけでなく、働く上でのルールなども教えています。
16時30分 夕食
少年の食事に立ち会います。
17時 退勤
私の所属する教育部門では、シフト制で勤務をしています。8時30分~17時の日勤、12時30分~21時の遅番、8時30分~翌朝9時の夜間勤務(途中で仮眠を挟む)という3つの勤務形態があります。
この仕事の楽しいところは?
少年たちの変わっていく姿や成長する姿を見られることがやりがいです。鑑別所から少年院に送られてきた当時と比べ、顔つきがガラリと変わったり、「以前の自分は間違っていました」と言って反省したりする少年もいました。
箸を「グー」の形でしか握れなかった少年が、出院する前の面接で、「箸の持ち方を学べてよかった」と言っていたこともありました。
その一方、よくなったと思ったのに、また悪くなり、少年院での日常生活が乱れてしまうケースも少なくありません。日々、少年の変化に向き合いながら取り組んでいくことが大切で、その点も面白いと感じています。
この仕事の大変なところは?
少年の1人1人、異なる家庭環境や交友関係を持っていて、不遇な境遇に置かれていたというケースも決して珍しくありません。そんな中でどのように声をかけ、対応していくのかが課題です。言っても聞かないこともありますし、毎日、毎回、試行錯誤を繰り返しています。
仕事につくために努力したこと
法務教官は国家公務員なので、国家公務員試験の中でも法務省専門職員採用試験に合格する必要があり、そのための勉強は頑張りました。また、非行少年の更生に関わるNPOの活動にも積極的に参加し、たくさんの出院者に接し、気持ちに寄り添えるよう意識してきました。その時の経験は今でも生きていると思います。
ある上司に言われた「自分たちが幸せに過ごしていないと、彼らには伝わらない」という言葉が印象に残っています。法務教官である私たちは、少年が一番身近に接する「大人の見本」です。本を読んだり自己研鑽に取り組んだり、私も自分自身に向き合いながらプライベートを充実させて、魅力的な人間でありたいと思っています。
今後の目標は?
これからも法務教官として経験を積み、将来的には自分が学生時代に関わっていたような非行少年の更生支援を行うNPOを立ち上げたいと思っています。
そして、少年院を出た少年たちが、社会人として健全に暮らしていけるように支援したいです。さらに言うと、私が支援をした少年たちが社会に出て成長し、いつか彼ら自身も元非行少年たちの支援を行ってくれたら……と考えています。
この仕事につきたい人へ
法務教官の仕事は、体力的にも、精神的にも、大変な部分がありますが、とてもやりがいのある仕事です。毎日同じタスクをこなすわけではないので、良くも悪くも「今日は何があるかな?」と思いながら、日々変わっていく少年たちと向き合うことが出来ます。それがこの仕事の面白さだと思いますし、「人が好き」という人におすすめの仕事です。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
この記事の感想や「こんな人の話を聞きたい!」「こんな仕事に興味がある!」自薦・他薦問わず「この人にインタビューしてほしい!」など。みなさんの声をお待ちしています。
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