地震・豪雨にどう備える? 名古屋市港防災センターで学ぶ、子育て家庭の防災対策【専門家監修】

地震・豪雨にどう備える? 名古屋市港防災センターで学ぶ、子育て家庭の防災対策【専門家監修】

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各地で大規模な地震や豪雨、そして台風などが相次ぎ、暮らしの安全がおびやかされています。中部エリアにも被害が出ており、日頃の防災対策の重要さを実感した人も多いのではないでしょうか。 

しかし、「家庭の防災対策を強化したい」「何か取り組まなければいけない」とは思いつつも、「どこから手をつければ?」「防災グッズはあるけど、他に何をしたら?」と漠然とした不安があるかもしれません。

名古屋市にある「名古屋市港防災センター」では、地震や火災などといった災害を疑似体験しながら、知識だけでは気づけないことも体を動かしながら学ぶことができます。

名古屋市にある「名古屋市港防災センター」では、地震や火災などといった災害を疑似体験しながら、知識だけでは気づけないことも体を動かしながら学ぶことができます。 

今回は、センター長の大場玲子さんにお話を聞きながら、実際に施設を見学。センターが担う役割や防災学習の意義、そして子育て家庭ですぐに実践できる、災害への備えについて教えてもらいました。 

名古屋市港防災センター センター長 大場玲子(おおば・れいこ)

名古屋市港防災センター センター長 大場玲子(おおば・れいこ)

名古屋市生まれ。名古屋大学大学院にて生命農学を専攻し、博士課程を修了。2008年からは日本科学未来館で科学コミュニケーターとして勤務した後、2012年に名古屋市港防災センターへ。現在は同センターのセンター長として、施設管理責任者・学芸員・防災士・農学博士という4つの顔を持つ。自然科学と防災を結びつける視点を大切にしながら、市民に向けた防災啓発の活動を続けている。

名古屋市港防災センターとは 

名古屋市港防災センターが開館したのは1982年。当時の国土庁(現・国土交通省)が主導した防災拠点構想にもとづき、災害との関わりが深い地域として名古屋市港区に建設されました。 

全国では大阪、川崎に次ぐ3番目に建てられた施設でしたが、大阪と川崎の施設が役目を終えたり移転したりしているため、現在では実質的に日本で一番歴史のある防災啓発施設となっています。3階には今も備蓄倉庫が残されており、防災拠点としての機能も備えています。 

3階には今も備蓄倉庫が残されており、防災拠点としての機能も備えています。

防災施設には、当センターのような体験型施設と、災害の記録を伝える伝承施設があります。当センターは、その両方の役割を担っているのが特徴です。

年間の利用者数は6万人以上で、夏休みや週末には、親子連れの姿が多く見られます。 

なぜ体験型の防災学習が必要か 

地震や台風、豪雨といった大規模災害への備え。

地震や台風、豪雨といった大規模災害への備え。ハザードマップや避難ルートの確認、非常持ち出し袋の準備など、基本的な防災知識は知っている、頭では分かっている、という人がほとんどでしょう。 

一方で、知識があることと、いざという時に体が動くことは別問題です。 

実際に大きな揺れに見舞われたとき、予想をはるかに超える豪雨が襲ったとき、頭で分かっていたはずのことも、とっさに出てこないことがあるのです。防災の知識は、体験や訓練を重ねて初めて、本当に「使える力」に変わっていきます。 

名古屋市やその周辺の地域は、近年でも最大震度4程度しか経験がありません。震度7の揺れがどんなものか、体験してみないと想像がつかないと思います。 

名古屋市港防災センターでは、そんな「知っているつもり」を実感に変える場を用意しています。震度7の地震の揺れを体感できる地震体験、1959年に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風の記憶を伝える伝承展示、高潮や津波が体験できる3Dシアター、煙の中を歩いて避難する火災避難体験。これらの体験を通じて、頭で覚えた知識が、体で分かる備えへと変わっていきます。 

実際に体験してわかったこと

まず体験したのは、震度7までの揺れを再現する地震体験です。

まず体験したのは、震度7までの揺れを再現する地震体験です。 

揺れが始まると、想像していた以上の激しさに驚きました。机の下に隠れようとしても、そんな余裕もなく、立っていることすら難しいほどの揺れ。 

頭では「机の下に隠れる」という基本を知っていたはずなのに、実際にはとっさに動けない。まさに知識と体感のギャップを痛感する瞬間です。 

こうしたときに重要なのが、床にうずくまり、頭と首の後ろを手で覆って守る姿勢です。近くに隠れる場所がなくても、この体勢だけで身を守ることができます。体験を通じて初めて、この基本動作の意味を体で理解できました。 

続く伊勢湾台風の3Dシアターでは、当時の民家を再現した空間で、高潮が迫りくる映像を体感しました。

続く伊勢湾台風の3Dシアターでは、当時の民家を再現した空間で、高潮が迫りくる映像を体感しました。 

暗い室内に足を踏み入れると、まず伝わってくるのは当時の生活の息づかい。そして始まる高潮の映像。足元から迫り上がるような感覚に、思わず身構えてしまいます。 

伊勢湾台風の被害の大きさは知識として知っていたつもりでしたが、目の前で追体験するとなると、恐怖の感じ方がまったく違うのです。 

数字や記録だけでは伝わらない「その場にいた人の感覚」に近づけたことが、この展示の大きな価値だと感じました。 

最後の煙避難体験で分かるのは、自分の手すら見えないほどの視界の悪さです。

最後の煙避難体験で分かるのは、自分の手すら見えないほどの視界の悪さです。 

煙の中に一歩踏み出した瞬間、目の前が真っ白になり、方向感覚さえあやふやになります。「煙は視界を奪う」「低い姿勢で移動する」といった知識は事前に知っていたはずなのに、実際にそのシチュエーションに身を置くと、想像以上の圧倒される感覚に襲われました。 

知識として知っていることと、体で感じる現実とのあいだには、これほどの差があるのだと痛感させられる体験です。 

子育て家庭の防災対策 

地震や水害が起きたとき、どのような行動をとるべきか。

地震や水害が起きたとき、どのような行動をとるべきか。親として、事前に子どもと話しておくべきことは何か。そして、備えとして用意しておくべきものとは? こうした疑問について、センター長の大場さんに詳しくお話を聞きました。 

地震が起こったとき 

地震は、いつどこで起こるか予測できない災害です。震源が海底にある場合は揺れの前に緊急地震速報が届くこともありますが、直下型地震では速報より先に揺れが来ることも珍しくありません。つまり、警報を待ってから動くのでは間に合わないケースがあるということです。 

だからこそ、「机の下に隠れる」など、その場でとっさに身を守る行動が最優先。揺れを感じた瞬間に体が動くかどうかが、身の安全を大きく左右します。 

一度安全な場所に避難したら、荷物を取りに戻るのは絶対にやめてください。過去の災害でも、自宅などに戻ったことで命を落としてしまった方が数多くいます。 

災害前にできる対策として大切なのが、子どもとの話し合い。

災害前にできる対策として大切なのが、子どもとの話し合い。まず親子で決めておきたいのが、災害時の避難場所と、家族の集合場所です。万が一、離れ離れになった場合でも、どこに向かえばいいかが分かっていれば、それだけで安心感が違います。 

また、連絡手段をあらかじめ用意しておくことはもちろん、万が一スマートフォンが使えない状況に備えて、公衆電話の使い方を教えておくと安心です。今の子どもたちにとっては馴染みが薄いからこそ、事前に教えておく価値があります。 

豪雨・台風が起きたとき 

台風は、気象庁の予測技術により5日ほど前から進路がわかるようになっていますそのため、災害が近づく前に「いつ」「何をするか」を家族ごとに決めておく「マイ・タイムライン」を作成することが効果的です 

5日前にはハザードマップで自宅周辺の浸水・土砂災害リスクの再確認、3日前には避難所や避難場所への避難ルートを家族で確認、前日には外に出してある植木鉢などを室内に入れるなど、段階的に準備を進めることができます。 

そのため、災害が近づく前に「いつ」「何をするか」を家族ごとに決めておく「マイ・タイムライン」を作成することが効果的です。

一方、線状降水帯などによる豪雨は、「気象解説情報」として半日前や直前に予測されます。さらに、「気象防災速報」として、発生情報や直前予測が発表されるので、携帯やTVなどで情報収集し、「発生してからどう動くか?」を考えておくことも重要です。

テレビの報道などで見かける、浸水した道を歩いたり車で通り抜けたりする映像は、実はやってはいけない行動の代表例。浸水した車は動かなくなることもあります。大雨が降っている時に安全な場所にいればその場にとどまり、気象情報を見ながら待つ判断も大切です。  

浸水した道は、絶対に歩いたり車で通ったりしないでください。水はとても汚れていて、傷口から感染症につながることもあります。

備えておきたい持ち物 

災害時に事前に指定された緊急避難場所で短時間避難することを1次避難、避難生活が長期化した場合や安全が確保できた際などに、生活環境が整った別の避難先に移ることを2次避難と言います。

災害時に事前に指定された緊急避難場所で短時間避難することを1次避難、避難生活が長期化した場合や安全が確保できたなどに生活環境が整った別の避難先に移ることを2次避難と言います。 

その際に必要となるものは、地震・水害など災害の種類にかかわらず基本的に共通です。 非常持ち出し袋は1次避難用として、そして自宅備蓄は2次避難または在宅避難用として準備しておきましょう。自宅備蓄の水・食料は最低3日分、もっとも望ましいのは1週間分とされています。

その際に必要となるものは、地震・水害など災害の種類にかかわらず基本的に共通です。

簡易トイレは折りたたみ式や組み立て式の便座で、携帯トイレは便座にセットする袋と凝固剤です。2つを組み合わせて使うと良いでしょう。

子育て家庭ならではの備えとして、折り紙やトランプなど、子どもが退屈しないための遊び道具を用意しておくのも1つの工夫です。慣れない避難生活のなかで、好きなおやつは気持ちを落ち着かせる心の栄養となるため、大きな支えとなります。 

赤ちゃんがいる家庭では、液体ミルクやレトルト離乳食、紙おむつを多めにストックしておくことも忘れずに意識しておきたいポイントです。 

最後に 

震度7の揺れや煙で視界の悪い状況を実際に体験してみると、知識として知っているだけでは足りないことがたくさんあると気づくことができます。 

名古屋市港防災センターに訪れることで、災害に備えて家族で「もしも」の話し合いをするきっかけづくりにも繋がるかもしれません。ぜひ一度、親子で訪れてみてはいかがでしょうか。 

そして、今回お伝えした防災対策は今すぐ家庭で実践できるものばかり。お子さんを含めた家族会議や、ハザードマップの確認など、今できることから備えを進めてみてくださいね。 

 

取材・文:きずなネットよみものWeb編集部
写真:太田昌宏(スタジオアッシュ) 

名古屋市港防災センター
【問い合わせ】052-651-1100
【場所】愛知県名古屋市港区港明1-12-20
【時間】9:30〜16:30
【定休日】月曜日(祝休日の場合は翌平日)、第3水曜日、年末年始(12月29〜13日)
【駐車場】なし
【公式サイト】 https://www.minato-bousai.jp/
【アクセス】地下鉄名港線「港区役所駅」から徒歩約3分
【料金】無料 
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