2023年5月に掲載した記事を再編集し、掲載しています。
子育て中のパパやママは、毎日子どもの世話や家事、仕事で忙しく、手一杯だと思います。そんな中で、もし災害が起きてしまったら……。
いざという時、自分と大切な家族を守れるよう、普段から防災の意識を高めておくことが大切です。そこで今回は、名古屋大学減災連携研究センターで「親子の防災」について研究をする蛭川理沙さんに、“おうち防災”について話を聞きました。

蛭川理沙さん
名古屋大学減災連携研究センター
エネルギー防災(中部電力)寄附研究部門特任助教
まずは家具の固定から

防災というと、水や食料を備蓄したり、避難のために必要なものを用意したり、やることが多すぎて、「一体、何から手を付ければいいの?」と、悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
そんな人に、まず最初にやって欲しいのは、家具の固定です。1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)の際、屋内におけるケガの被害の約50%が家具の転倒・落下によるものでした。
ホームセンターなどで、L字金具、ベルト、突っ張り棒、ストッパーなど、家具を固定するためのさまざまな器具が売られています。1つだけでなく、複数を組み合わせて使うとより効果的です。
「壁に穴を開けるのが嫌だ」「突っ張り棒ってダサい」。その気持ちはよく分かります。しかし、安全を確保することが何よりも大切です。大切な家族と自分自身を守るために、家の中をチェックして、しっかり対策をしましょう。
子どもと一緒に話し合おう

2011年の東日本大震災発生時、津波により多くの死者が出た宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区で、54人の園児を無事に避難させた保育所があります。
当時の所長は、震災以前から津波を想定した避難訓練を行ったり、避難計画を作成したり、しっかりと対策を行っていたと言います。「渋滞する道路はどこか」「子どもたちの避難先はどうするか」など、日ごろからイメージしていたので、いざという時に慌てることなく、行動できました。そして、園児たちは避難先でも、いつもと同じようにみんなで歌を歌い、お絵かきをし、大きなパニックになることもなかったそうです。
愛知県刈谷市の現役ママたちがつくった、「ちきゅうくんのくしゃみ」という親子向けの防災絵本があります。
「地震や津波、豪雨、台風など、自然災害は怖いけど、地球はくしゃみを繰り返して、今の形になっている」ということを子どもにも分かりやすく教えてくれます。
家の中でどこが1番安全?
避難場所はどこにする?
避難バッグはどこに置く?
連絡はどうやってとる?
このように、ただ怖がるだけではなく、家族でしっかり話し合って対策することが大切です。特に小さなお子さんには話すだけでなく、こういった絵本を通じて楽しみながら、防災について一緒に学ぶことがおすすめです。
地震はいつ起きるか予測できません。色々なケースを想定し、話し合っておきましょう。
みんなで避難バッグをつくろう

災害は、誰にとっても無関係ではありません。「自分ごと」として考え、十分に備えることが大切です。
例えば、首都直下地震が発生した場合、ライフラインの復旧目標日数(内閣府発表)はこのようになっています。
上水道…30日
ガス…55日
通信(固定電話)…14日
お店に人が殺到し、必要なものが手に入らなくなる可能性もあります。救援物資もすぐに届くとは限りません。
以前、被災地で聞き取りしたところ、「アレルギー対応の非常食がなかった」「子どもが非常食を食べてくれなかった」「生理用品を1つしかもらえなかった」など、さまざまな声が聞かれました。
一方で、「救援物資の中にキャラクターのばんそうこうがあって、子どもが元気になった」という声も。大変な時も、お気に入りのものがあるだけで、元気が出ます。
みなさんのおうちでも、「もし、数日間避難生活をするとしたら?」をイメージしながら、避難バッグを用意してみてください。
備蓄はローリングストックで

非常食や保存食を用意しても、賞味期限が切れてしまっていたら、いざという時、役に立ちません。そこで「ローリングストック」をおすすめします。
普段から缶詰やフリーズドライ食品、カップ麺などの食材を少しだけ多めに買い置きしておき、味期限の近いものから順に食べていく。そして、食べた分だけ、また買い足すというのが、ローリングストックです。
こうすると、賞味期限切れの心配はありませんし、普段から非常食や保存食を食べ慣れておくことで、災害時に「子どもが食べてくれない」なんてことも起こりにくくなります。日頃から防災意識を高めるためにも、ローリングストックをおすすめします。
最後に
災害時には子育てだけでなく、予期しない労働が加わります。想定外の家事や手続き、さらには災害によるストレスもあります。
さまざまな被災地で調査を実施してきましたが、残念ながら、子育て層への支援体制は十分とは言えませんでした。忙しい日々の中、つい後回しにしてしまいがちですが、普段から防災意識をもち、いざという時に動けるよう、子どもと一緒に準備を進めておきましょう。
名古屋大学東山キャンパスにある「減災館」では、地震や津波などの災害を想定した再現装置や、最先端の防災・減災に関する展示を行っています。産官学連携・地域連携で災害による被害を減らし、早期復旧のための研究も実施されており、中部電力も参加しています。減災館の見学・利用についてはこちらをご覧ください。
文:きずなネットよみものWeb編集部





