産後の肥立ちとは|産褥期の過ごし方・やってはいけないこと

産後の肥立ちとは|産褥期の過ごし方・やってはいけないこと

「産後の肥立ち」という言葉を聞いたことはありますか?産後の肥立ちは、出産を終えたママの身体にとって大切な回復期のこと。昔からの言い伝えで、「床上げは3週間」という言葉があり、特にこの期間は安静にしておくべきだと言われています。
医療が十分ではなかった時代は、産後の肥立ちが悪いと命に関わることも珍しくありませんでした。そのため、昔から出産を終えた女性は心身を休ませるべきとされていました。
「産後の肥立ち」は医学用語ではありません。現在は、「産後の肥立ち」を医学的に「産褥期(さんじょくき)」と呼んでおり、その期間は6~8週間。
産後、いつまで安静にすべきか、やってはいけないことや気を付けたい食べ物など、産褥期の過ごし方について産婦人科医がご紹介します。

監修医:上田弥生(うえだ やよい)先生

監修医:上田弥生(うえだ やよい)先生
産婦人科専門医。大阪出身、現在、東京都内のクリニック勤務。2児の母。妊娠中はつわり、思考力の低下、火照り、不眠等に悩み、産後は感情のジェットコースター状態を味わう。夫も妻のガルガル期に恐れおののいていたというほど、普段とは違う状態を体験。ホルモンに振り回される感覚を経験する中で、漢方、アロマテラピー、心理療法などの効果を自身で人体実験し効果を実感した。出産後、数か月毎に段階的に回復してきたと実感していたが、完全に元通りの体調だと感じるのに、自らの体感としては1年以上かかると感じているので、すべての産後の女性に無理しないでほしいと願っている。著作に『オトナ女子のためのスメらない手帖』があり、ニオイケアの専門家としても活躍。

産褥期(さんじょくき)とは?

産後の肥立ちとは、「産後の女性の体が出産前の体調に回復するまでの状態や期間のこと」を指します

産褥期とは、「妊娠が終了し、妊娠・出産に伴う母体の生理的変化が非妊時の状態に戻るまでの状態をいいます。
女性の体は出産によって、大きなダメージを負います。「全治1~2か月の交通事故にあったような状態」と表現する方もいて、多くの出産経験のある女性がそれに賛同しているようです。
また、出産後はダイナミックに生理的な変化が起き、心身ともに普段とは異なる状態にあります。そのため、産後は安静に過ごし、体の回復を最優先させることが大切だと考えられています。

産後の肥立ちが悪い とは?

「産後の肥立ちが悪い」とは、出産前の体調に戻るのが遅く、なかなか回復しない状態を表わす、昔ながらの表現です。産褥期に無理をすると、心身にトラブルが出やすいと言われています。育児や日常生活にも支障をきたしてしまいかねません。
そうならないよう、身体をしっかり休める必要があります。

産後3週間は安静に

床上げの目安は3週間

日本では昔から、産後の安静にする時期の終わりを「床上げ」と表現し、産後21日と言われています。
家事を少しずつ再開するのは、この床上げ後の産後3~4週間頃が目安です。
ちょうどそのころには産後の1か月検診があります。
診察を受けて順調に回復していると判断されれば、日常生活を開始して良いと言われますので、それから徐々に動くようにしていきましょう。
ただ、まだこの時期は、体に負担が大きい作業や長距離移動は控えた方がよいでしょう。
また、心身の調子が回復して日常生活に戻っていけるまでの期間は個人差もあります。
焦らず無理せず、周囲にうまく頼っていきましょう。(ちなみに、筆者は妊娠前ぐらいまで心身の調子が回復したと感じるまで1年以上かかっています。)

妊娠前の体に戻るのは産後6~8週間(産褥期)

一般的に、産後の母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間は6~8週間と言われています。
これが「産褥期」と言われる期間。世界保健機関(ICD10)では、42日間と定めています。
産褥期でも、まだ無理は禁物。体の回復具合には個人差があります。体調が思わしくなければ、無理をせずにしっかり休息をとりましょう。

体調が回復するまでに、産後1年くらいかかる方もいるようです。産褥期に無理をすると、その後の体調に影響する可能性があるとも言われています。
産褥期に控えたいことについては、次章で詳しく解説します。

産褥期にやってはいけないこと

産後は安静にした方がよいと言っても、全く動かないのは難しいですよね

産後は安静にした方がよいと言っても、全く動かないのは難しいですよね。
気を付けるべきポイントをおさえておきましょう。

【産後に気を付けること】

  • 水を使うこと(水仕事)
  • 目を使うこと(読書や針仕事、スマホなど)
  • 身体に負担がかかる家事
  • 激しい運動
  • 長時間の外出
  • タバコやお酒
  • 産後すぐの性行為

水を使うこと(水仕事)

日本では昔から、産後に水をさわるとよくないと考えられています。
身体が冷える、回復に影響するなどの理由で、「水仕事をしてはいけない」と親から言われる方もいるかもしれませんね。
産後の水仕事に関して、医学的な根拠は見当たりません。ただし、身体の冷えは、東洋医学的には不調の原因の1つです。また、水仕事の中には比較的、身体への負担の大きな作業もあることも、避けるように言われている理由の一つかもしれません。

目を使うこと(読書や針仕事、スマホなど)

目を使うことも、昔から産後には控えるべきだと考えられていることの1つです。
昔は、「針仕事や読書はしてはいけない」と言われていました。
現代は、テレビやスマホ、パソコンなどがあり、昔以上に目を酷使しがちです。
実際に妊娠中や産後は、「目が疲れる」「視力が落ちた」と感じる方も少なくありません。
西洋医学的に目を使ってはいけない理由ははっきりしません。しかし、東洋医学的に説明すると、出産や、そこからの身体の回復、母乳をつくるため「血(いわゆる血液とは異なる、東洋医学的な概念です)」が不足し、血を蓄えたり巡らしたりするのが「肝(これも、いわゆる肝臓とは異なる、東洋医学的な概念です)」であり、目を酷使すると肝の気を消耗するので、産後の回復に良くないと言われています。
産後、目が疲れやすい、視力が低下したような気がする、目がかすむなどの自覚症状がある方は特に、無理をせず目を休ませるようにしましょう。
安静にしていると「ついスマホに手が伸びる…」という場合は、使う時間を制限するなど工夫してみて下さいね。

身体に負担のかかる家事

個人差はあるものの産後3~4週間くらいから簡単な家事を少しずつ再開できるようになる方が多いでしょう。
ただこの時期の骨盤は、まだまだ不安定です。産後すぐに立ち上がろうとすると、腰がぐらぐらして立っていられないと感じた方もいるかもしれません。
その状態から、3~4週間たって、やっと徐々に動きだせる状態に回復してきている途中の段階。大掛かりな掃除や長時間の立ち仕事など、体に負担がかかる家事は控えた方が良いでしょう。
腰に負担がかかりやすい重いものの移動やお風呂の掃除、換気扇の掃除などは家族に任せましょう。
家事を再開する際は、簡単な片付けなど無理のない範囲から始めてくださいね。

激しい運動

産後すぐは、妊娠前の体型に戻るのか不安になりますよね。
ただ体調が回復しないうちに、運動を始めるのは危険です。ジョギングなどの激しい運動をするのは好ましくありません。

産後の運動は、寝ながらできる産褥体操から始めるようにしましょう。産院で説明される場合もあるかと思いますが、産褥期の体操は大きな動きのない体操です。
まずはママの体調を第一にして、安静に過ごすことを優先させましょう。

長時間の外出

産後の体調が回復するまでは、旅行や長距離のお出かけは控えるのが無難です。
特に首がすわる前の赤ちゃんを連れた外出は、お世話も大変ですし、ベビー関連用品などの荷物も多くなりがちで、心身共に疲れるものです。どうしても外出しなければならない場合には、家族やヘルパーさんに付き添ってもらうと安心ですよ。

タバコ

タバコは母体だけでなく、赤ちゃんの健康や発育にも影響します。
タバコの煙を赤ちゃんが吸ってしまう、いわゆる「受動喫煙」も赤ちゃんの発達に影響が出ると言われています。
赤ちゃんの受動喫煙による健康被害は、喘息、気管支炎、中耳炎、SIDS(乳幼児突然死症候群)、小児がんなど。また、身長が伸びないことへの影響もあるという研究もあります。タバコによる事故(火傷や、タバコの誤飲、タバコの浸かっている液体を飲み込んでしまうなど)もあるため、さまざまなリスクがあります。
ママだけでなく、パパや家族も禁煙にチャレンジしてもらいましょう。

産後すぐの性行為

まだ体調が万全でない時期の性行為は、ママの体に大きな負担がかかります。
再開の目安は、産後の1カ月検診で問題が無いと診断された時。ですが、あくまでもご自分の心身の状態から無理のない時に行う方が良いでしょう。
なお、次の妊娠までの期間は、出産の状況により異なります。
帝王切開の場合は最低でも1年あけるよう病院で指導があることが多いでしょう(身体の状況や医療機関により避妊期間は異なりますので、確認してください)。
避妊方法はコンドーム、ピル、子宮内避妊リング、あるいは避妊手術という選択肢もあります。それぞれ使用開始が可能な時期やメリット・デメリットに違いがありますので、かかりつけの医師とご相談し、ご自分の状況に合うものを選択されると良いと思います。

産後に気を付けたい食べ物は?

産後の体をスムーズに回復させるには、何よりバランスの良い食事が大切です

産後の体をスムーズに回復させるには、何よりバランスの良い食事が大切です。その上で、特に気を付けたいことは以下の4つです。

  • 授乳中の飲酒はNG
  • インスタント食品に注意
  • カフェインの摂りすぎに注意
  • サプリメントは医師に相談を

授乳中の飲酒はNG

赤ちゃんの体は未熟なため、母親の母乳にアルコールが含まれていた際に上手く分解ができません。赤ちゃんの脳や体の成長に影響を与えるため、たとえ少量であっても控えます。
もしも飲酒するようなら、ほどほどにしておき、授乳まで少なくとも3時間はあけた方が良いでしょう。
ノンアルコールのビールやワイン、リキュールなども最近は種類が豊富になっています。
カロリーや添加物に気を付けつつ、こういった商品をうまく活用して楽しむのもおすすめです。

インスタント食品に注意

産後は、自炊がままならない時期もあり、お惣菜やインスタント食品で済ませることもあるでしょう。ただ、加工食品やインスタント食品で気を付けたいのが、炭水化物や脂肪が多く、野菜が少ないなどの栄養バランスの偏りや、塩分過多。過剰な塩分はむくみなどの原因になるため注意が必要です。
また、ビタミンやたんぱく質を十分とる方が、産後の心身の回復に役立つでしょう。インスタント食品やお惣菜は栄養バランスがとれているか、塩分は摂りすぎていないかなど気を付けつつ、うまく使ってください。
産後は体調も安定せず、多忙なので、宅配食などを活用し、健康に配慮されたメニューを選択するのも良いでしょう。

カフェインの摂りすぎに注意

カフェインの摂取も授乳中には気を付けたいポイント。
アルコールと同様、赤ちゃんはまだカフェインを分解するのに時間がかかります。
赤ちゃんがカフェインを摂ると、情緒不安定になったり、よく眠ってくれなくなったり、泣く回数が増えたりする可能性があります。
カフェインはコーヒー以外にも、抹茶や緑茶、ウーロン茶、紅茶、栄養ドリンクなどにも含まれており、自分でも気づかないうちにカフェインを摂りすぎていることも。
コーヒーなどのカフェイン飲料なら、1日2杯程度にとどめましょう。飲むタイミングは授乳のすぐ後にして、次の授乳まで時間をあけるのも良いでしょう。
最近では、ノンカフェインのコーヒーや紅茶も増えています。また、ハーブティーを楽しむのも良いでしょう。
お気に入りのノンカフェインドリンクを探してみて下さいね。

授乳をしているママは「母乳の為にも、たくさん食べなければ…」と思う方もいるかもしれません。ただ、無理にたくさん食べる必要はありません。大切なのは、食事の量よりも栄養バランスがとれていることです。

そして、食事と合わせて水分補給にも気をつけるようにしましょう。こまめに水やお茶やスープなどで水分補給をしてくださいね。

二人目の産後、兄姉との対応は?

二人目出産の場合は、一人目以上に周りのサポートを頼りましょう

産褥期は、安静が第一です。とはいえ上の子がいると、なかなか安静にしてはいられないもの。
二人目出産の場合は、一人目以上に周りのサポートを頼りましょう。
そして、上の子とママだけの時間を作ってあげることが大切です。
二人目出産の場合、上の子が赤ちゃん返りをするなど、一人目にはなかった育児の悩みがあるもの。ママ一人だけで乗り切るのは、子供のためにもなりません。
「母親が全てしなければならない」と一人で抱え込まずに、周囲の人にサポートしてもらったり、公的支援を活用したりしましょう。
また、上の子は、赤ちゃんがお家にやってきてから、これまで独り占めしていたママの愛情が奪われたと感じて不安定になりがちです。
家族が一人増えるたびに、新たに家族の関係性を再構築していくことになりますが、そのためにも上の子に十分なケアが必要です。上の子のケアを周囲の人にお願いしましょう。
また、上の子とママとの時間は、赤ちゃんのお世話を一時的に家族に任せ、赤ちゃんが寝ているときなどに確保します。
抱きしめたり言葉で愛情を伝えてみたりと、上の子がママを独り占めする時間をつくれば、たとえ短い時間であっても安心してくれるでしょう。

最後に

一人目の出産、二人目以降の出産、どちらもママの最優先事項は、産後の身体の回復です。そのためには、家族など周りにサポートしてもらうしかありません。

一人目の出産、二人目以降の出産、どちらもママの最優先事項は、産後の身体の回復です。そのためには、家族など周りにサポートしてもらうとよいでしょう。
出産前であれば、周りの人がサポートしやすいよう、生活環境や育児環境を見直しておくのもおすすめです。
誰に何をサポートしてもらうか、整理しておくと産後もスムーズに生活できるでしょう。
家族の手を借りるだけでなく、市区町村の産後ケア施設や産後ヘルパー制度、民間の家事代行サービスを使うなど、工夫してみて下さい。

産後の肥立ちは、産後の体調回復に大切な時期です。ママが無理をしないことが子供のためにもなるはず。
普段から、心身の不調や日常の不安、気になることなどを、尋ねたり相談したりできる人や状況を周囲につくっておくのがおすすめです。産後は周囲の人に助けてもらったり、公的機関や医療機関などを活用したりして、一人で抱えずに上手に周りを頼ってくださいね。

文:上田 弥生

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