子供はよく「お腹が痛い」と言います。甘えたくてお腹をさすってほしい時も、学校に行きたくない時も「お腹が痛い」と言います。一方で、「お腹が痛い」というのが重大な病気の初期症状であることも。今回は、子供が「お腹が痛い」と言った時の原因と対処法を紹介します。
小児科医が必ず見ていること
医療機関が閉まっている時間にも関わらず、子供が「お腹が痛い」と言い出した時、親御さんは夜間・休日診療を受診すべきか悩みますよね。また、朝、保育園や学校に送り出す前に「お腹が痛い」と言われたら、休ませるべきか迷ってしまいます。そのため、「連れてくるかどうか迷ったんですけど……」と申し訳なさそうに病院にやって来る親御さんも多いです。
小児科医が子供を診察する時、必ず見るポイントがあります。このポイントを知ることで、受診すべきかどうかの判断基準になると思います。
それはつまり、「子供が元気かどうか」です。
もちろん、「体調が悪く、いつもより元気がない」というのは加味した上で、小児科医は子供が診察室に入ってきた瞬間から、「歩ける」「話せる」「遊べる」「目線が定まっている」「親に抱きつく力がある」「周りに関心を示す」などの点を注意深く観察し、重症度を判定しています。
小児科医と目が合って大泣きできる子は「元気があるな」と思います。「お腹が痛い」と言いながらも、普通に会話ができる、診察室にあるものに興味を示したり、持ってきたおもちゃで遊んだりする場合は少し安心します。
一方で目線が合わず、親御さんに抱きつく力が弱々しく感じられる場合は心配です。また、お腹の痛みで歩けない、前かがみになってお腹を抑えながら歩くような場合には注意しなくてはなりません。
子供の腹痛は便秘を疑え!
私の外来に腹痛で受診する子供の9割くらいは、便秘が原因です。ただし、親も子も、場合によっては私の外来を紹介してくれた小児科医ですら、その子が便秘であることに気づいていないことも多いです。特にトイレットトレーニングが完了し、自分1人で排便して、お尻も拭けるようになると、親は子供の排便状況をしっかり把握することができなくなります。
毎日ウンチをしていても、食べた分だけウンチが出てこないと、ウンチはお腹の中に溜まっていきます。すると、ウンチが硬くなって出にくくなったり、もしくは出す時に痛みを伴ったりして、便秘になります。
よくよく話を聞くと、毎日ウンチは出ているが、コロコロした小さいウンチが数個出るだけという子もいます。ウンチが硬くてうまく出せず、トイレにいる時間が長い、1日に何度もトイレにこもるという子は、まず便秘を疑った方がいいでしょう。
便秘の子どもの親自身も、便秘であることが多いです。また、その子の兄弟姉妹も便秘の可能性が高いです。すると、週に2、3回しか排便していなくても、親御さんは自分や兄弟姉妹よりと比較して、「排便は順調です」と答えます。
子供が「お腹が痛い」と言った時には、どんなウンチ(形・硬さ)が、どれくらい(量・頻度)出ているのかを、一度、子供に聞いてみてください。硬い便が少量しか出ていない、排便回数が少ない場合には、市販の浣腸薬を試してみても良いでしょう。浣腸で症状が改善すれば、便秘が原因だったと言えます。
2週間以上続く腹痛には要注意
子供が「お腹が痛い」と言った時、便秘以外に考えられる原因の多くは、ノロウィルスやロタウィルスなどによる急性胃腸炎です。通常は腹痛だけでなく、嘔吐や下痢も伴いますが、初期には腹痛のみが表れることも。急性胃腸炎であれば、経口補水液などを飲み、脱水症状にならないようにしていれば、基本的には2週間以内で自然に治ります。
しかし、2週間以上にわたって腹痛が続く場合は、別の原因が疑われます。さらに、次のような症状が見られたら、2週間を経過していなくても医療機関を受診してください。
- 血便や黒色便がある
- 吐いたものが黄色や緑色
- 赤いものや、コーヒーの残りかすのような黒や茶色の粒々が混じったものを吐く
- 膝を抱え込んでうずくまる
- 歩くとお腹に響く痛み
- みぞおちの辺りから右下腹部へ痛い場所が移動している
- 陣痛のように強い痛みが一定時間をおき、繰り返し起こる
- 痛みで動けない、しゃべれない
- 時間とともにどんどん具合が悪くなる
- 短期間に何度も胃腸炎と診断される
好酸球性胃腸炎とは?
他にも、意外と多いのが、「お腹のアレルギー」とも言われる好酸球性胃腸炎です。しかし、好酸球性胃腸炎という病気自体がまだ広く認知されていないため、正しく診断されないこともあります。
好酸球性胃腸炎は食物中のアレルゲンなどが原因となることが多いですが、日常的に食べている米や小麦、大豆、卵などが原因の場合、痛みを引き起こす食材を特定するのが困難です。その食材を食べなければ痛みがなく、食べるとまた痛くなる……という地道な方法で確認していきます。
ただし、原因となる食材が複数ある時は、全ての食材をやめないと痛みがなくならないので、より判断が難しくなります。結局は内視鏡検査しなければ、最終診断ができないため、「精神的なストレスが原因の腹痛」と扱われてしまうことも少なくありません。血液によるアレルギー検査でも原因となる食材が分からないことが多いです。
最後に
原因の分からない腹痛が続く場合には、小児消化器病を専門とする小児科医のもとを受診しましょう。以上のことをお子さんが「お腹が痛い」と言った場合の参考にしていただけたら幸いです。
文:十河剛

筆者:十河剛 (そごうつよし)
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。
動画セミナー『子供の天才性をハグくむ叱らなくても子供が勝手に動く究極の親子コミュニケーション術』