この記事は「中日こどもウイークリー」で2025年9月20日に掲載された記事を転載しています。
みなさんは「香害」という言葉を聞いたことはありますか。柔軟剤や化粧品などのにおいによって、頭痛やアレルギー症状などの健康被害や不快感が生じることです。この香害に関する初の全国調査の結果が、2025年8月に公表されました。香害に悩まされる人はどれくらいいるのでしょうか。
給食着が「苦手」
小中学生を対象に行われた調査によると、1割が香害による体調不良を経験。未就学児も含め、体調不良を経験した人の4人に1人が登園や登校を嫌がる傾向がありました。全体の8.3%が柔軟剤などの香料が原因で、腹痛や下痢、吐き気や頭痛などの症状が出たとしています。
学年が上がるほど体調不良経験者の比率は増えていました。特に目立ったのは、「給食着を何とかしてほしい」という声です。児童生徒が給食で使用した後、各家庭で洗濯して次の当番の人に回すため、対策が難しいからです。「いいにおい」のはずが、人によっては心身に影響を与えてしまうのです。
洗濯で香料が付着
洗濯用洗剤や柔軟剤の香料が問題化したのは最近になってからです。2000年代後半以降、海外の香りの強い柔軟剤が話題になり、国内メーカーによる類似商品の発売が相次ぐようになりました。
柔軟剤の香りが長続きするのは、香料や消臭成分が詰まった「マイクロカプセル」という微粒子が配合されているからです。柔軟剤を使って洗濯した衣服には、このカプセルが大量に付着します。人が服を着た後、摩擦や熱でカプセルが壊れ、香りが放たれる仕組みです。
香害に詳しい新潟大の非常勤講師、平賀典子さんは「マイクロカプセルはプラスチックで、花粉と同じくらい小さいです。柔軟剤を使うと、マイクロカプセルのほとんどが排水として海に流れてしまうため、環境問題にもなります」と話しました。
深刻化する場合も

香害の症状がひどくなった人の中には、こうした日用品の化学物質がきっかけとなり、ほんの少しの化学物質にさらされただけで重い症状を引き起こす「化学物質過敏症」になってしまうケースもあるとされます。
対策はあるのでしょうか。平賀さんは「衣類から放出される化学物質をなるべく削減していくことが大切。香害はあまり認知されていないので、まずは知ってもらうことから始める必要があります」と訴えました。




