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「日本人のほぼ半分以上が罹患(りかん)している」と言われるほど身近な病気でありながら、どんな病気なのか、しっかり理解している人が少ない歯周病。高齢者だけでなく、育児や仕事に忙しいパパ・ママ世代でも注意が必要です。
そこで今回は、歯科医師の越智英行さんに、歯周病とはどんな病気なのか、どんなリスクがあるのか、さらに予防・治療方法について教えてもらいました。
歯科医師・日本口腔外科学会認定医 越智英行(おち・ひでゆき)
2010年、昭和大学歯学部卒業。2018年、昭和大学大学院歯学研究科臨床系歯科麻酔科学修了。現在は、医療法人社団「コンパス」の常務理事を務めるかたわら、東京の「コンパス内科歯科クリニック赤羽」で院長及び外来診療を担当している。
歯周病とはどんな病気?
歯を失うリスクも
歯周病のことはよく知らなくても、歯肉炎になったことがある人は多いのではないでしょうか。歯肉炎は歯周病の初期段階で、歯と歯茎の間にひそむ歯周病菌によって、歯肉に炎症が起こっている状態を指します。この段階では痛みやかゆみはほとんどありません。
しかし、歯周病が進行すると、歯茎や骨といった組織まで破壊され、強い痛みを感じたり、歯がぐらぐらしたり、ひどい場合には歯が抜けてしまうこともあります。実は歯がなくなる1番の原因は、虫歯ではなく歯周病なのです。
全身に悪影響を与えることも
また、歯周病は全身にも悪影響を与えることが知られています。歯茎は非常に血流が豊富なので、歯周病菌が歯茎から体内を循環し、悪さをするからだと考えられています。たとえば歯周病を発症していると、糖尿病や心筋梗塞などの発症リスクが高まります。
また、妊娠している場合、早産や低体重児の出産リスクも高まります。健康のためにも、歯周病を防ぎ、治す必要があると言えるでしょう。
歯周病の治療法は?
では、歯周病になってしまったら、どのように治療をするのでしょうか。歯科医院では主に、歯周病菌がひそむ歯石を除去し、歯と歯茎の間「歯周ポケット」の洗浄をします。それによって歯周病菌を退治することが出来ます。
歯周ポケットは自分ではケアしきれないので、2、3か月に1回程度は通院し、歯はもちろん、歯周ポケットもクリーニングしてもらいましょう。保険適用となる場合がほとんどなので、定期的に検診とクリーニングを受けるようにしたいですね。髪が伸びたら美容院に行くように、歯科医院への通院を習慣化することをおすすめします。
歯周病を防ぐには?
正しく歯みがき
歯周病の予防や治療には、自宅でのケアも重要です。歯みがきをする時は鏡の前で行い、磨き残しがないように気をつけましょう。
歯ブラシや歯間ブラシは、歯並びや頬の裏の硬さ、磨き方の癖などによって、合う・合わないがあります。よく分からない場合には、歯科医院でアドバイスを受けてみてください。自分が今使っている歯ブラシを持っていくと、ヘッドの大きさやブラシの硬さなど、的確なアドバイスがもらえますよ。
また、歯を磨いた後に何度も口をゆすぐ人がいますが、歯磨き粉に配合されたフッ素を残すために、軽くゆすぐだけでOKです。
禁煙を心がけて
喫煙は歯周病を悪化させます。喫煙によって血行が悪くなり、免疫機能が落ちるので、歯周病にかかりやすくなるのです。歯周病の罹患リスクは、1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っていると4.3倍に上昇し、さらに重症化もしやすくなります。お口の健康のためにも、禁煙を心がけたいですね。
最後に
非常に身近な病気である歯周病。初期段階では痛みがないので放置しがちですが、悪化すると歯を失い、全身疾患のリスクも高める厄介なものです。強い痛みを感じる前に、定期的なクリーニングで歯周病を防ぎましょう。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部