マイコプラズマ肺炎の症状は?子供の原因不明の熱に注意!【医師解説】

マイコプラズマ肺炎の症状は?子供の原因不明の熱に注意!【医師解説】

※2023年12月掲載の記事を編集し、再掲載しています

マイコプラズマ肺炎が、過去10年で最多の水準で流行しているとのことで、各地で注意が呼びかけられています。ここでは、子供の間でたびたび流行するマイコプラズマ肺炎の症状や治療法について解説します。

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生

筆者:十河剛 (そごうつよし)
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。
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熱が下がらないのは、なぜ?

私の長女が5歳の時、38度以上の熱を出したことがありました。

私の長女が5歳の時、38度以上の熱を出したことがありました。わが家では、風邪にともなう多少の熱であれば、葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)などの漢方薬で対応することが多いのですが、この時はなかなか下がりませんでした。気になる症状は熱だけで、元気で食欲もあり、せきや鼻水などもなかったため、それほど心配はしていませんでした。

しかし、5日以上発熱が続いたため、普通の風邪ではないと考え、私の勤務先の病院に連れて行きました。そして、長女の胸のレントゲン写真を撮ると肺の一部が白く映っていたのです。そう、マイコプラズマ肺炎でした。マイコプラズマ肺炎に効果のある抗菌薬を処方したところ、翌々日には熱が下がっていきました。

マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎とは、「マイコプラズマ」と呼ばれる微生物が原因で起きる肺の感染症です。マイコプラズマは人間の唾液や鼻水の中に含まれていて、せきやくしゃみなどによって飛び散り、周囲の人に移ることがあります。

マイコプラズマ以外の細菌やウィルスによる肺炎は、3歳以下の低年齢児に多く見られ、小学生以上で感染することはまれです。しかし、マイコプラズマ肺炎は大人でも感染するため、油断はできません。私たち小児科医は3歳以上の子供に肺炎の症状が見られた場合、まずマイコプラズマ肺炎を疑います。

かつては、「マイコプラズマ肺炎は4年に1回、オリンピックの年に流行する」と言われていました。しかし、現在はオリンピックに関係なく、たびたび流行しています。

マイコプラズマ肺炎の症状は?

マイコプラズマ肺炎の症状は、発症直後の初期段階では普通の風邪と区別がつきません。しかし、発熱が5日以上続いたり、せきが1週間以上続いたりする場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性があります。

通常、肺炎が起こっている場所に聴診器を当てると、「ブツブツブツ……」という雑音が聞こえてくるのですが、マイコプラズマ肺炎の場合、そのような音は聞こえません。

通常、肺炎が起こっている場所に聴診器を当てると、「ブツブツブツ……」という雑音が聞こえてくるのですが、マイコプラズマ肺炎の場合、そのような音は聞こえません。そのため、医療機関に行っても「異常なし」や「ただの風邪」と診断されてしまうケースが多くあります。しかし、いつまで経っても熱が下がらず、別の医療機関を受診してレントゲンを撮ってみたところ、肺炎が発覚するということも少なくありません。

また、肺の下部、お腹に近い場所が肺炎になると、肺を包む袋状の組織「胸膜」にまで炎症が及び、腹痛を引き起こすことも。ほかに、体にじんましんが出たり、肝機能に異常が現れたりすることもあります。

私が研修医時代に調べたデータでは、20~30%程度に肝機能の異常がみられると書かれていました。また、重症化すると白目や皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)がみられることもあります。肺だけでなく、すい臓にも炎症を起こして、強い腹痛を起こす「急性すい炎」の原因になることもあるため、注意が必要と言えるでしょう。

マイコプラズマ肺炎では、その特徴から別の病気と間違われることもありますが、決して最初に診断した医師のせいではありません。私達、医師の間では「後医は名医」という言葉があります。「後から診た医師の方が正しい診断にたどり着きやすいため、名医と思われがち」という意味です。

マイコプラズマ肺炎の診断と治療

マイコプラズマ肺炎かどうかの診断は、流行状況や発症年齢、レントゲン写真の所見から確認し、下されます。現在では咽頭ぬぐい液(のどに綿棒を入れて粘膜を軽くこすって検体を採取する方法)や痰(たん)からマイコプラズマの遺伝子を検出する検査(LAMP法)が1番確実な方法とされています。ただし、すべての医療機関で出来る検査ではないので、症状や流行状況などから診断して、治療が開始される場合があります。

治療には主にマイコプラズマ肺炎に対して効果のある抗菌薬が使われます。投薬を始めて2、3日すると症状が良くなりますが、せきに関しては一時的に痰が絡むような湿った咳になり、ひどくなることもあります。決して症状が悪化しているのではなく、肺炎によって潰れていた肺に空気が入るようになり、そこから痰が出てくるため起こる現象です。こうした段階で聴診器を当てると、肺から特徴的な音が聞こえるようになります。

マイコプラズマ肺炎の予防法

マイコプラズマ肺炎はワクチンがないため、ワクチンによる予防はできません。

マイコプラズマ肺炎はワクチンがないため、ワクチンによる予防はできません。 基本はマスク、うがい、手洗いといった風邪の予防と同じです。外出先から帰宅したら、うがい、手洗いを必ず行うようにしましょう。

コロナ禍を経て、子供のマスク着用には賛否両論ありますが、感染症による重症化リスクから守るという点では、少なくともマイコプラズマが流行している時期にはマスクの着用をおすすめしています。

また、他人に感染させないという意味で、くしゃみやせきをする際にはハンカチなどで口を抑える「せきエチケット」も子供たちに教えておいてくださいね。

文:十河 剛

 

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