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公園やカフェなどで、ペット連れで過ごしている人の姿も多く見られるようになってきました。しかし、ただかわいがるだけではなく、きちんとしたしつけがあってこそ、同じ空間にいるみんなが幸せになれます。
今回は、犬・猫と暮らす際のマナーやしつけ、お世話のポイントについて、ペットの飼い方や法令に詳しい愛玩動物飼養管理士で、ペットショップに勤める岡本さんに聞きました。
愛玩動物飼養管理士・岡本さん
子犬・子猫専門のペットショップ「PetPlus(ペットプラス)」を運営する「AHB」で、複数店舗のエリアマネージャーを務める。
PetPlus(全国150店舗展開)
【公式サイト】https://www.ahb.jpn.com
犬を飼う際の義務やルールを知る
犬を飼う際に、飼い主が果たすべき義務やルールがあるのを知っていますか? 法律によって決まっていることもあるため、次のようなことは確実におさえておきましょう。
法律によって決まっている義務
・飼い犬の登録を行う義務(狂犬病予防法)※
・飼い犬へ狂犬病予防注射を接種する義務(狂犬病予防法)※
・マイクロチップを装着した犬の所有者情報を変更する義務(2022年より、動物愛護管理法)
※登録をした際にもらえる鑑札と注射済票を首輪に付けましょう。付けていない迷子犬の場合、捕獲・抑留の対象となり、飼い主は20万円以下の罰金に処せられることがあります。ただし、特例参加地域の場合、マイクロチップが鑑札の代わりとなるため、鑑札を付けていない場合もあります
※小型犬や室内犬も登録が必要です
きちんとしつけて、お互い幸せ
犬のしつけは、飼い主と犬が安全で快適に暮らすために必要不可欠。しつけを行うことで得られるメリットには、次のようなものがあります。
・犬とのコミュニケーションが円滑になる
・犬と一緒に楽しめることが増える
・危険(飛び出しや拾い食いなど)を避け、犬の命を守る
・災害時、避難所で役に立つ など
プロに聞いた! 犬のしつけのコツ
犬の「しつけ」というと、お手やおかわりなどを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、それらはゲームや芸の一種です。犬は合図を覚えることはできますが、文章を理解することはできません。 言語を持たない犬と人のコミュニケーションツールが「しつけ」なのです。
犬はボディランゲージで感情の表現を行うので、人が犬の気持ちを読み取り、正しい排泄の場所や吠え・噛みなど、人と生活していくために必要なルールを教えてあげましょう。
また、生まれたばかりの子犬にとっては、すべてが初めての経験です。見聞きするもの、ありとあらゆることに興味を持つため、生後半年くらいまでには、人と犬がお互い穏やかに暮らすためのルールを理解してもらうことが必要です。
私たちのショップでも、ペットの健康管理に加え、トイレトレーニングや社会性を身につけるトレーニング、生活音のトレーニング、お手入れのトレーニングを行っています。また、ペットを初めて飼う人はもちろん、多頭飼育を検討する人も安心してペットを迎えられるよう、専門知識を身につけた「ペットアドバイザー」が相談に乗っています。
しつけの際に気を付けたいこと
・声のトーンや大きさに注意して声をかけること
※突然の大きな声は苦手
※逆に、明るく高めの声だと陽気になりやすい
・怒らないで褒めて伸ばすこと
※怒る時は声をかけず無視をする。逆に、褒める時は大げさにすると、かまってもらうことがうれしいため、怒られるような行為をしなくなることが多い
猫を飼う際に心掛けたいこと
猫を飼う際にも、飼い主が果たすべき義務やルールがあります。
法律によって決まっている義務
・マイクロチップを装着した猫の所有者情報を変更する義務(2022年より、動物愛護管理法)
猫にも「しつけ」は出来ますか?
プロに聞いた! 猫のしつけのコツ
猫は生後間もない時期から飼い始めても、犬のようにしつけをすることは難しいとされています。家の中でも、1度入った場所は自身の縄張りとみなすため、毎日チェックするために入りたがります。入らせたくない部屋や場所(クローゼットや浴室などの危険な場所)については、家族間でも徹底し、興味本位で入らせないことが大切です。また、犬と比べても行動範囲に「高さ」が加わるため、入ってはいけない場所・触ってほしくない場所などへの対策も、しっかり考える必要があります。
「うちの子はどんな子?」が大切
「ソファや柱・壁での爪とぎをやめてくれない」「キッチンのコンロの上に乗ることをやめさせたい」など、家具への被害や危険な行為の抑制に困っている飼い主が多くいます。
これらを防ぐためには、しつけではなく「飼い主が先回りして対策をする」ことが大切。猫の様子を日々観察するようにしてください。
家具や壁などでの爪とぎを防ぐ対策
爪とぎには「爪のセルフケア」「縄張りの主張」「リラックスと気分転換」といった理由があります。猫が好む材質の爪とぎを屋内のいろいろな場所に置くなどの対策が有効。爪とぎも、床に置く・立てて置くなど、個性や好みに合った設置を見極めましょう。
猫の侵入を防ぎづらい場所の対策
アイランドキッチンやカウンターキッチンの場合、日常的に侵入を防ぐことは難しいですよね。食材や調味料はもちろん、洗剤、スポンジなどは触れない場所にしまっておくことで、誤飲・誤食を防止できます。コンロ部分も全面を覆うカバーなどが販売されていますので、猫が上に乗ることで困っている場合は検討してみてください。
きちんと確認! 飼う時の心構え
犬や猫など大切なペットを迎える際は、次のような点をおさえておきましょう。
大切な家族を守るために
・家族全員の同意を得る
・ペット飼育可の住居に住む
・散歩をする時のルールやマナーを知る
・不妊・去勢手術などについて考え、対応する
・適正なしつけを心掛け、鳴き声や匂いに配慮する
・種類や個性に合った世話を考えて実施する
・体調や様子に合わせて最適な医療を受けさせる
・住居の形態やペットの個性に合わせた脱走防止策を考える
ペットの一生に責任を持つ覚悟
身近にペットがいることは、生活をより豊かなものにしてくれます。そして、子どもはペットとの関わりを通じて情緒面や責任感、生命との関わりについての思考が深まるなど、情操教育に良い影響を与えるとも言われています。
さらに、ペットを飼うということは、「家族」としてその一生に責任を持つことです。私たち人間と同じように命ある存在であり、毎日食べ、排泄し、眠り、運動するため、お世話に休みがなく、出費も発生するなど、事前に認識しておくべきことがたくさんあります。
また、一緒に出かける際は、動物が苦手な人やアレルギーがある人もいることに配慮するなど、ペットマナーの向上に努めることも大切です。
最後まで責任をもって飼えるのか、一緒に幸せに暮らすためにはどんなことができるのか、飼い始める前に家族でしっかり話し合いましょう。
最後に
小さくて愛らしい動物たちに出会えるペットショップですが、そこは命の重さと責任にも向き合う場所でもあります。
そして、マニュアル通りのしつけや対策ではなく、お迎えした犬や猫、それぞれの個性に合った対応をすることで、ペットと飼い主がともに穏やかで幸せな毎日が過ごせるはずです。
文:森下右子/写真:間宮博