産後のホルモンバランスはどう変わる?症状と影響を解説【医師監修】

産後のホルモンバランスはどう変わる?症状と影響を解説【医師監修】

女性が妊娠すると、女性ホルモンをはじめ、さまざまなホルモンバランスが急激に変わります。分かっていたつもりでも、ココロとカラダに大きな影響が出ることで戸惑う方も多いのではないでしょうか。特にはじめての妊娠の場合は、不安も大きいもの。今回は、妊娠・出産に関わる女性ホルモンの変化やその影響について、医師監修の内容でご紹介します。

監修医:上田弥生(うえだ やよい)先生

監修医:上田弥生(うえだ やよい)先生
産婦人科専門医。大阪出身、現在、東京都内のクリニック勤務。2児の母。妊娠中はつわり、思考力の低下、火照り、不眠等に悩み、産後は感情のジェットコースター状態を味わう。夫も妻のガルガル期に恐れおののいていたというほど、普段とは違う状態を体験。ホルモンに振り回される感覚を経験する中で、漢方、アロマテラピー、心理療法などの効果を自身で人体実験し効果を実感した。著作に『オトナ女子のためのスメらない手帖』があり、ニオイケアの専門家としても活躍。

妊娠で女性ホルモンはどう変化?

女性ホルモンは妊娠によってどのように変化するのでしょうか。 女性が妊娠すると、お腹の中の赤ちゃんに栄養分を与え、出産に備えてカラダが準備していきます。その時に大きな役割を果たすのがさまざまなホルモンです

女性ホルモンは妊娠によってどのように変化するのでしょうか。
女性が妊娠すると、お腹の中の赤ちゃんに栄養分を与え、出産に備えてカラダが準備していきます。その時に大きな役割を果たすのがさまざまなホルモンです。
受精卵が子宮内膜に潜り込んで着床し、妊娠が成立すると、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は緩やかに増えはじめます。増えはじめるきっかけとなるのは、妊娠の成立とともに分泌される「ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)」。
hCGは妊娠に特有のホルモンで、妊娠判定にも使われます。

hCGには、女性ホルモンを増やす働きがあります。女性ホルモンは分娩前まで、どんどん増加。月経の停止、胎盤の発達、おっぱいへの血液を増やすなど妊娠を維持し、出産に向けてカラダの準備をする働きをします。
一方、女性ホルモンの増加に加え、妊娠・出産に関わるホルモンの分泌でホルモンバランスが大きく変化。カラダとココロにさまざまな不調やトラブルが起こりやすくなります。

続いて、ホルモンバランスの変化でどのような症状が出やすいか見てみましょう。

ホルモンバランスの変化と症状

妊娠によって大きく変わるホルモンバランス。それによって、以下の症状が出やすいと言われています。

つわり

妊娠初期に多くの妊婦さんが経験するつわり。吐き気や嘔吐、食欲の低下など辛い症状が起こります。
妊娠5週頃から始まり、妊娠12週~16週頃には落ち着くことが多いようです。しかし、つわりの症状がいつから始まり、いつまで続くかは個人差が大きく、まったく経験しない人も。
実はつわりの原因については、まだはっきりとは分かっていませんが、急激なホルモンバランスの変化が要因の一つと考えられています。
特にhCGの分泌量の変化とつわりの症状が連動しているため、hCGとつわりには深い関係があるとされています。

肌の不調

妊娠初期から増え始める女性ホルモンが、肌の不調を引き起こすことがあります。
プロゲステロンは皮脂分泌を増やす働きをもちます。皮脂が多すぎると毛穴につまって毛穴が目立ったり、ニキビ・吹き出物などのトラブルを引き起こしたりすることも。
また、エストロゲンは、メラニン色素の生成を促進する働きがあり、シミ・ソバカスの原因になります。

かゆみ

妊娠中のホルモンバランスの変化で、皮膚にかゆみが出ることがあります。人によっては全身に激しいかゆみを感じたり、発疹が同時に現れたりすることも。お風呂で身体が温まることや、強い紫外線にあたることでかゆみが強まることがあります。

抜け毛

妊娠中に増えるプロゲステロンは、髪の毛を増やす作用があります。そのため、妊娠中には抜け毛が減り、髪の毛が増える場合も。
しかし、髪の毛が発毛してから脱毛するまでのサイクルはホルモンの影響を受けやすいです。妊娠でホルモンバランスが変わると周期が短くなり抜け毛につながることもあります。
また、ホルモン以外でも栄養不足やストレスなどで抜けやすくなる方もいます。

出産に備える女性ホルモンの働き

出産に向けて、女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」は重要な働きをします。また、女性ホルモン以外にも、出産に備えてさまざまなホルモンが分泌されます。エストロゲンと出産に備えるためのホルモンがどのような働きをするのか、見てみましょう。

エストロゲン

分娩に備えて子宮頚管を少しずつゆるめる働きがあります。また、授乳のための乳腺の発達にも関わっています。

リラキシン

分娩に備えるためのホルモン。骨盤周りなど全身の関節や靭帯をゆるめる働きがあります。妊娠2~3ヶ月頃から分泌されると言われており、陣痛が始まったときに赤ちゃんが産道を通りやすくなるよう、身体全体がゆるみ、産道(子宮頚管)が柔らかくなり、拡がりやすくなります。

オキシトシン

陣痛を誘発したり、産後の出血を抑えたりする働きがあるとされているホルモン。妊娠の初期から後期にかけて少しずつ分泌が増え、分娩時にピークに達します。

プロラクチン

授乳のためのホルモン。妊娠中期から後期にかけて母乳を作ります。妊娠後期にはプロラクチンの分泌がかなり増え、授乳に向けた準備が行われます。

女性ホルモン、出産後は?

赤ちゃんが生まれると、女性ホルモンの分泌量が一気に減るなどホルモンバランスに急激な変化が起こります。その結果、抜け毛が増える、肌が荒れる、精神的に不安定になるなどさまざまな不調が起こりやすくなるのです

赤ちゃんが生まれると、女性ホルモンの分泌量が一気に減るなどホルモンバランスに急激な変化が起こります。その結果、抜け毛が増える、肌が荒れる、精神的に不安定になるなどさまざまな不調が起こりやすくなるのです。

赤ちゃんに授乳している間、女性ホルモンは低い状態が続きます。一方、妊娠中から分泌されていたオキシトシン、プロラクチンは、産後も分泌され続けます。この2つが産後どのような働きをするのかも見てみましょう。

オキシトシン

オキシトシンには、赤ちゃんの泣き声などによって、母乳が分泌されるようにする働きもあります。また、赤ちゃんとお母さんの愛情や絆を深めるとも言われています。

プロラクチン

プロラクチンも母乳の分泌を促す働きをもっています。赤ちゃんが乳頭をくわえると、プロラクチンが分泌され、プロラクチンが増えると母乳も増えるという仕組みになっています。また、排卵を抑える作用もあり、授乳をしていると月経の再開が遅くなります。(※授乳中でも月経がはじまることもあります)

最後に

妊娠中から産後にかけては女性ホルモンをはじめとしたホルモンバランスが大きく変化し、さまざまな不調が現れやすいとき。辛いときにはムリをしないで、しっかり休み、自分を労わる時間をつくるようにしましょう。

ひとりでなんとかしようとせず、パートナーや家族、まわりの人に頼ることも大切です。ただし、男性は妊娠中のカラダやココロの変化を知らないことが多いもの。妊娠が分かったら、少しずつ妊娠中や産後の大変さについてパートナーに知ってもらいましょう。

家庭内のいざこざ回避のためにも、ホルモンバランスの変化によってココロも影響を受けるということを伝えておけるとよいですね。

文:荒井 梨乃

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