プレ更年期に生理不順 ママ世代に多い体の不調を婦人科医が解説

プレ更年期に生理不順 ママ世代に多い体の不調を婦人科医が解説

子育てや家事、仕事と毎日忙しく過ごすママたち。何となく体の不調を感じながらも、ついそのままにしていませんか? 女性は40歳くらいになると、ホルモンバランスの乱れにより、さまざまな体の不調が現れ始めます。今回は、婦人科専門医として、女性の健康を支える月城沙美(つきしろ・さみ)医師に、30~40代の子育てママ世代に多く見られる病気や不調について、解説してもらいました。

医療法人沙月•レディクリニック名古屋伏見  月城沙美理事長(兼院長)
福井医科大学医学部、名古屋市立大学医学部大学院卒業。名古屋市立大学病院での臨床研修・診療を経て、公立陶生病院(愛知県瀬戸市)や東京の婦人科など、複数の医療機関に勤務。
2021年4月にレディクリニック名古屋伏見(名古屋市中区)、2023年11月にレディクリニック八事山手通(同市昭和区)を開院。

女性の体とエストロゲン

女性の体は、女性ホルモン「エストロゲン」によって守られています。エストロゲンは女性が妊娠や出産をするために必要なホルモンですが、ほかにも、骨や血管を丈夫にしたり、肌や髪のハリを保ったり、気持ちを明るくしたり、さまざまな働きがあります。

このエストロゲンの分泌量は20~30代にピークを迎え、40代半ばから50代半ばにかけ、大きく揺らぎながら急激に減少していきます。それに伴い、体と心にさまざまな不調が現れるのが、いわゆる更年期障害です。

更年期とは閉経前の5年と閉経後の5年、計10年ほどを指し、日本人の閉経年齢は平均51歳なので、一般的に45~55歳あたりが該当します。中には40代前半などで、早めに更年期が訪れる人もいます。

35~45歳はプレ更年期に注意

更年期まではいかなくとも、30代後半からエストロゲンは徐々に減り始め、少しずつ体に不調が出てきます。

更年期まではいかなくとも、30代後半からエストロゲンは徐々に減り始め、少しずつ体に不調が出てきます。そのため、35~45歳あたりを「プレ更年期」と呼ぶことがあります。

プレ更年期に見られる主な症状

  • 寝つきが悪い
  • すぐイライラする
  • 憂うつになることがある
  • 以前より涙もろくなった
  • リラックスできない
  • やる気が出ない
  • 日中の体力が持たない
  • 集中力が続かない

不調を感じたら婦人科へ

エストロゲンが減少しているかどうかは、血液検査で調べられます。「何となく調子が悪い」と感じたら、婦人科を受診し、検査してみましょう。もし、エストロゲンが減少していても、適切な治療をすることで症状は軽くなります。過度に恐れることはないですよ。

プレ更年期の場合、私のクリニックでは漢方による治療などをおすすめしています。漢方の場合、効き始めるまでに時間がかかるので、2、3週間~1か月くらいは継続する必要がありますが、うまく体質に合えば、症状が大きく改善します。

また、低用量ピルの服用も効果的です。低用量ピルには女性ホルモンが含まれているため、エストロゲンの減少によって起こるさまざまな症状を軽くしてくれます。低用量ピルには血栓症や心筋梗塞のリスクがあるため、「40代には使わない」と言う医師もいますが、きちんとガイドラインを守って使用すれば、40代以上でも安心して使うことが出来ますよ。50歳か閉経のどちらか早い方で止めることになっています。

エクオール入りのサプリも

「エクオール」の入ったサプリメントを摂取するのもいいですね。

「エクオール」の入ったサプリメントを摂取するのもいいですね。エクオールとは大豆イソフラボンをもとに体内でつくられる成分で、エストロゲンとよく似た働きをするため、更年期症状の緩和に効果的とされています。納豆や豆乳などから大豆イソフラボンをとるのもいいですが、実は日本人の場合、体内で大豆イソフラボンをエクオールに変換できるのは2人に1人しかいません。

自分がエクオールに変換できる体質なのかを検査するキットも売られています。もし、変換できない体質の場合は、エクオール入りのサプリメントを摂取してみてください。いずれも病院やドラッグストアなどで購入できます。

生理の悩みを放置しない

30代後半くらいから、生理の周期や期間が短くなったり、経血量が減ったり、生理に変化が出てきます。

30代後半くらいから、生理の周期や期間が短くなったり、経血量が減ったり、生理に変化が出てきます。これらは年齢とともに起こる自然な変化ですが、中にはひどい生理痛や下痢、吐き気など、見過ごせない症状もあります。

生理直前から終了までに生じる不快な症状を総称して「月経困難症」と呼びますが、その背景には別の病気が潜んでいることもあります。「ただの生理痛」などと放置せず、適切な治療を受けることをおすすめします。

月経困難症の原因となる病気には、次のようなものがあります。

子宮筋腫

子宮に出来る良性の腫瘍です。女性の3人に1人は子宮筋腫を持っているとされ、見つかったからといって必ずしも治療が必要というわけではありません。

ただ、ある程度大きくなると、経血量が多くなったり、生理痛がひどくなったり、日常生活に支障をきたします。特に症状が進むにつれて、少しずつ経血量が増えていくので、気付かないうちにひどい貧血になっている人もいます。

場所や大きさによっては切除手術になることもありますが、まずは薬で筋腫を小さくする薬物治療が一般的です。

子宮内膜症

本来は子宮の内側にある子宮内膜が卵巣や腸、膀胱(ぼうこう)のすき間など、子宮内膜以外の場所にでき、生理の度にだんだん増殖していく病気です。特に卵巣に出来た場合を「チョコレート嚢胞(のうほう)」と呼びます。

「生理痛がひどい」「前よりも生理痛がひどくなった」「痛み止めが効きにくい」などの症状がみられる場合は、子宮内膜症かもしれません。

ひどい生理痛に対しては、鎮痛剤や漢方薬で痛みを和らげます。さらに、ホルモン療法といって、女性ホルモンの分泌量を減少させることで症状を緩和する治療なども行われています。

子宮腺筋症

子宮内膜が子宮の筋層の中にでき、生理の度に出血して、子宮筋層が厚くなっていく病気で、子宮内膜症の一種です。主な症状はひどい生理痛や月経過多、骨盤の痛みなど。子宮内膜症と同様、鎮痛剤による痛みの軽減やホルモン療法などが行われます。

このような具体的な病気がなくても、ストレスや環境の変化などで生理痛が重くなったり、不順になったりします。そうした場合でも、低用量ピルを服用するなど、適切な治療をすることで、症状が改善されます。

PMS(月経前症候群)とは

月経困難症とはまた別に、月経前症候群(PMS)というものがあります。

月経困難症とはまた別に、月経前症候群(PMS)というものがあります。PMSは生理3~10日前くらいに見られる体と心の不調のことで、生理が始まると数日で軽くなるか、なくなるのが特徴です。

PMSの原因はまだはっきりと分かっていない部分が多いですが、排卵から生理が起こるまでの期間に分泌される黄体ホルモンが関係しているとされています。症状はさまざまあり、個人差が大きいです。代表的なものとしては、次のような症状があげられます。

PMSの代表的な症状

<身体的な症状>

  • 肌が荒れる
  • 体がだるい
  • 胸が張る
  • むくむ
  • 食欲不振
  • 食欲増進
  • 腹痛
  • 頭痛
  • 腰痛
  • お腹が張る

<精神的な症状>

  • 気分が落ち込む
  • イライラする
  • 眠くて仕方ない
  • 集中できない

PMSの改善には適度な運動や規則正しい生活、ストレスの解消などが有効だと言われています。まずは生活習慣の改善に努め、それでも症状が良くならない場合には、薬による治療などもあります。また、あまりに症状が重いと日常生活に支障をきたすケースもあるので、1人で悩まず、専門医に相談してみてください。

最後に

このように、女性の体は年齢とともにさまざまな変化があります。「何となく調子が悪い」と感じたら、早めに病院を受診し、相談してみてください。思わぬところに病気が隠れているかもしれません。

毎日忙しく過ごすママだからこそ、自分のために、家族のために、今一度、自分の体について見つめ直してみてくださいね。

文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部

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