アレルギーの予防や対策は? 子どものアトピーとぜん息について知ろう 【医師監修】

アレルギーの予防や対策は? 子どものアトピーとぜん息について知ろう 【医師監修】

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近年、急増する子どものアレルギー。アレルギーにはさまざまな症状がありますが、中には乳幼児など低年齢で発症しやすいアレルギーも。

今回は、子どもに多く見られる代表的なアレルギーの中から、アトピーとぜん息について解説。アレルギー反応が起きる要因などの基礎知識をはじめ、予防や対策などについて紹介します。

近藤康人教授

藤田医科大学 ばんたね病院 教授・小児科 近藤康人医師

藤田医科大学医学部卒業。小児科専門医・指導医、アレルギー専門医・指導医として診療に携わりながら、藤田医科大学総合アレルギーセンターの研究部門長も務める。医学博士。

アレルギーって何?

人間には、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るための「免疫」というシステムがあります。

人間には、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るための「免疫」というシステムがあります。この免疫が、本来は無害な動物の毛やホコリ、栄養となるはずの食物などにも敏感に反応し、体に有害な症状を引き起こすことを「アレルギー反応」と言います。

近年、アレルギー疾患の患者は急増しており、日本では国民の約半数が何らかのアレルギー疾患に罹患していると推定されています。 アレルギー反応が起きるかどうかは、環境などさまざまな要因が複合的に関係するため、ひと言では言い表せません。しかし、アレルギーになりやすい体質かどうかの判断材料として、「両親や兄弟姉妹の誰かが、何かしらのアレルギー疾患を持っている」という遺伝的要素があると言われています。

アレルギーの中でも乳幼児に多いのが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーです。また、6、7ケ月頃の乳児期後半になると、ぜん息を発症する子どもが増えます。

アトピーの要因は?

アトピーは、外界のさまざまな刺激から皮膚を守る、肌のバリア機能が低下することなどによって発症します。発症には、遺伝的要素が関わっているほか、バリア機能の低下した肌に動物の毛やホコリ、食品のカスなどのアレルゲンが触れることが原因とされています。

加えて最近の研究では、アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症を誘発することも明らかになってきました。

加えて最近の研究では、アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症を誘発することも明らかになってきました。 症状としては肌の乾燥やかゆみを伴う湿疹が、顔や手足などに現れるのが特徴です。特徴は、湿疹にかゆみを伴うことと、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返すこと。慢性的とは、乳児で2ケ月以上、1歳以上で6ケ月以上、継続する状態をさします。

 乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の見分け方って?

アトピー性皮膚炎と症状が似ている疾患に、乳児湿疹(脂漏性皮膚炎)が挙げられます。下記にそれぞれの特徴の違いを紹介します。ただ、区別が難しいケースも多いので、気になる炎症がある場合は、必ず病院で診察してもらいましょう。

乳児湿疹

  • 顔や首に炎症が見られる
  • 体や四肢には炎症が見られない
  • 皮脂が多め
  • かゆみがほとんどない

アトピー性皮膚炎

  • 顔や体、四肢に炎症が見られる
  • 足などに乾燥した部分がある
  • かゆみを伴う
  • (子どもの場合)ひっかき傷がある

アトピーの予防と対策

アトピーの治療は、保湿を主としたスキンケア、外用薬(ステロイド剤など)、環境整備の3つが基本です。 昨今では、生後6ケ月から使用可能な非ステロイド性の軟膏、12歳から使用できる内服薬や13歳からできる注射など新薬もあります。治りが悪いと感じた場合は、かかりつけ医などに相談をしてください。治療により3歳までに約4割が完治しますが、ストレスなどで大人になって再発したり、治ったりを繰り返す場合もあります。

かくことで皮膚のバリア機能が低下し、悪化するケースも多いです。専門医の指示のもと、正しい用法、用量を守ってステロイド剤の塗り薬を用い、かゆみをコントロールすることが大切です。

ぜん息の要因は?

ぜん息は、発作で気管が狭くなり、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸困難を生じさせる病気です。
ぜん息は、発作で気管が狭くなり、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸困難を生じさせる病気です。アレルギー疾患の既往歴のある家族がいるなどアレルギーになりやすい体質の子や、風邪などのウイルス感染症にかかりやすい子、風邪をひいた時に咳が長引く子などがぜん息になりやすいと言われています。
また、ぜん息の発作や悪化を引き起こす最も危険な環境因子と考えられているのが、タバコの煙です。受動喫煙はアレルギー疾患リスクを高めるともいわれていて、電子タバコでの受動喫煙のほか、喫煙者の衣類などを介しても影響を及ぼすため、特に周りの大人は禁煙することが理想的です。

ぜん息以外の原因も!長引く咳に注意

長く治まらない咳についてはさまざまな原因が考えられます。中には、下記のような病原体による感染症の場合もあります。2週間以上咳が続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

百日咳

子どもの発症が多く、特有のけいれん性咳発作(痙咳発作)が特徴の急性気道感染症のこと。感染して5~10日後に、鼻水や咳といった風邪のような症状が出現しますが、風邪薬や咳止め薬は効かず、少しずつ咳が増え、症状も激しくなることが多いです。激しい咳が刺激となり、嘔吐してしまうこともあります。初期の症状軽減には、抗生剤が効果的とされています。

マイコプラズマ肺炎

咳症状が強い肺炎です。高熱が出ることが多く、肝機能障害や髄膜炎を伴うことも。血液検査や胸部レントゲン写真での診断後、薬剤による治療が一般的です。

感染後咳嗽

感冒(風邪)を含むさまざまな呼吸器感染症の後、長く咳が続く状態を指します。上記した百日咳、マイコプラズマ肺炎などを「感染後咳嗽(がいそう)」に含めることもあります。

結核

「結核菌」という細菌による慢性感染症です。“昔の病気”というイメージが強いかもしれませんが、今でも年間1万人以上の新しい患者が発生しています。発症しても早期発見ができれば、重症化と周囲への感染拡大を防ぐことが出来ます。

ぜん息の予防と対策

本格的なぜん息や重症化を防ぐためには、早期の受診・治療が鍵に。ぜん息が少しでも疑われる場合は、早めに専門医を受診しましょう。
診断時に呼吸機能を調べる「大きく息を吸って、大きく吐く」という検査が難しい年齢の子については、気管支拡張薬で症状に改善が見られるかどうかによって、仮診断ができます。
治療には一般的に、ロイコトリエン拮抗薬の飲み薬が用いられます。症状が軽い場合には、この薬で快方に向かうケースが多く、発作をコントロールできるようになります。また、飲み薬で良くならない場合は吸入での治療が行われます。
吸入は効果的である反面、副作用に注意が必要なため、専門医の指示のもと決められた回数を正しい吸入方法で使用しましょう。

最後に

アトピーやぜん息のアレルギー反応が起きる要因はさまざまですが、まずは、家族で協力しながら清潔な環境を整え、アレルギー発症の予防に努めることが大切です。
その上で、気になる症状がある場合には、かかりつけ医や専門医に相談を。近年はアレルギーに関する研究が進み、新しい治療法や薬なども増えていますので、医師の指導のもと、症状に合わせて適正な予防と対策を心がけましょう。
イラスト:竹内舞/文:花野静恵

この記事は「頼れる病院・クリニック2016-2017」「頼れる病院・クリニック2022-2023」(ゲイン刊)に掲載された記事をもとにしています。掲載内容は取材時のものです。

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