年の瀬のあわただしい日々。1年頑張ってきた自分へのごほうびにおすすめしたいのが、アロマオイルです。特に年末年始は、自分自身でも気が付かない間に無理をしてしまい、疲れもたまっているはず。新しい年を気持ちよくスタートするためにも、アロマをとり入れて心と体を整えてみませんか。
※この記事は「頼れる病院・クリニック2020-2021」(ゲイン刊)に掲載したものを加筆・修正して作成しています
脳にアプローチして心身をケア
年末年始は何かとあわただしく、時間に追われる中でストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。人は過剰なストレスにさらされると、自律神経が乱れて体内のホルモン調整がうまくいかなくなり、その結果として免疫バランスが崩れてしまいます。
アロマオイルの芳香成分は、自律神経系を統括したり、脳下垂体(のうかすいたい)と協力して内分泌(ホルモン)系をつかさどったりする働きをする視床下部(ししょうかぶ)に直接作用します。そのため、アロマオイルの香りをかぐことで、自律神経やホルモンが整う、免疫バランスを保つといった自然治癒力を高める作用が期待されます。
免疫力の低下は、ストレス、疲労、睡眠不足が主な原因と言われています。アロマオイルに含まれる成分によっては、大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)内にある特定の神経伝達物質の分泌を促すことも解明されています。
その一例が、精神的緊張の緩和、安眠、鎮静作用を促すセロトニンなどです。快楽、幸福感、意欲を高める作用があるといわれるドーパミンや、充足感、高揚感、気分を高めるとされるエンケファリンなども、アロマオイルの香りによって分泌が促される例として知られています。
免疫力低下の3大要因別に、効果が期待できるアロマオイルを紹介します。
ストレスを感じている時
神経の鎮静作用:ローマンカモミール、ラベンダー、マジョラム、ネロリ
神経の調整作用:ベルガモット、スイートオレンジ、グレープフルーツ、フランキンセンス
【おすすめの使用法】
芳香、吸入、マッサージ、入浴
疲労を感じている時
ペパーミント、ローズマリー、レモングラス、ジュニパー
【おすすめの使用法】
芳香、吸入、マッサージ、入浴
睡眠不足を感じている時
ラベンダー、ローマンカモミール、マジョラム、ネロリ
【おすすめの使用法】
入浴、寝る前または寝室に芳香、寝具への噴霧
自分の好きな香りがベスト
アロマオイルは植物の種類やその抽出部位(花、葉、果実、樹脂など)、主な原産地の違いなどにより、とても多くの種類が存在します。それぞれのアロマオイルの作用や特徴を知り、目的に合わせて使うことでより高いアロマテラピー効果が期待できます。
そしてアロマオイルを選ぶ際、もう1つ大切にしたいことは「自分の好み」です。香りは本能、情緒、記憶といった脳の部分と密接につながりをもつ嗅覚を刺激します。その時の自分にとって心地よい香りかどうかが、心への働き方や効果に大きく影響を及ぼすのです。
アロマオイルを選ぶ時にはぜひ、作用だけではなく、自分が心地よいと感じる香りかどうか、好きな香りかどうかを基準に選んでみてください。
アロマオイルの手軽な利用法
アロマオイルの利用法というと、アロマポットやディフューザー(香りを芳香するための器材)、キャンドル、お風呂の湯に垂らす方法などが一般的ですが、ほかにもさまざまな利用法があります。初心者も気軽に始められる、アロマオイルの利用法を紹介します。
ハンカチに1、2滴垂らす
アロマオイルを数滴垂らしたハンカチを持ち歩くことで、外出中のストレスを和らげ、手軽にリラックスできます。また、寝る前にアロマオイルを垂らしたハンカチを枕元に置くことで、睡眠のサポートにも有効です。
マグカップで即席ディフューザー
熱湯を入れたマグカップにアロマオイルを数滴垂らせば、即席ディフューザーに。マグカップに少し顔を近づけ、目を閉じて鼻からゆっくり呼吸すると喉の痛みやせき、鼻水、鼻づまりを和らげる効果も期待できます。
オイルを垂らしてフットバス
温かいお湯を入れた桶にアロマオイルを垂らし、そこに足や手を10分程度浸しましょう。冷えやむくみ、痛み、こわばりなどの軽減につながります。
人工香料との違いに注意!
自分にとって心地のよい香りは、心理的にも生理的にもポジティブな作用をもたらします。しかし、香りを暮らしに取り入れる際には、アロマオイルと人工香料の違いに注意する必要があります。
アロマオイルは精油(エッセンシャルオイル)といって、植物が自ら植物体内でつくり出した天然の芳香成分です。芳香成分には薬理作用があり、それらのメカニズムは科学的にも解明されています。
一方、世の中に流通している香料の多くは人工香料(合成香料)であり、一般的に市販されている消臭剤やコスメなどに多く使用されています。人工香料の場合、アロマオイルのような作用がないことに加え、多用すると気分が悪くなることもあるので、注意しましょう。
アロマオイルを使用する際は精油の品質が重要になるので、正しい効果を期待するのであれば、アロマテラピーの専門家がいる店で相談しながら選ぶのがおすすめ。専門家に相談できない場合は、精油ごとに成分分析されたプロフェッショナル仕様のグレードを選ぶとよいでしょう。
最後に
免疫バランスが崩れると、肌荒れや老化の原因につながるともいわれています。暮らしの中にアロマオイルを上手に取り入れ、清々しい気持ちで新年を迎えてみませんか。
イラスト:竹内舞/文:花野静恵