子どもの不登校はどうして起こるのでしょうか。前回の記事では、不登校の要因について、年齢別にお伝えしました。今回は、学校に行けなくなった子に対して、病院ではどんな対応をするのか、また、周りの大人はどのように関わればいいのか、子どもの不登校に詳しい小児科医に話を聞きました。
長崎県立こども医療福祉センター所長 小柳憲司(こやなぎ・けんし) 専門は小児科学、心身医学。長崎大学医学部・教育学部、佐賀大学医学部、長崎医療技術専門学校非常勤講師なども務める。書籍 「白ひげ先生の幸せカルテ ココロちゃんの記録」 監修。
不登校に対する病院の対応
その上で、学校に「行きたいけど、行けない」と訴える場合には、一緒に行ける方法を考えます。「行きたくない」という場合は、ずっと家に引きこもっているのはおすすめできませんから、短時間だけでも学校に行く方法や、教室に入るのが難しければ別室登校、学校に行くのが辛ければフリースクールなど別の場所で活動するなど、できることを考えていきます。
責めないで「受け入れる」
子どもはある日突然、不登校になるわけではありません。少しずつ学校に行くのを嫌がるようになり、だんだん行けない日があらわれ、その日数が増えていく……というようになります。
初期の段階で、親御さんが「どうして行きたくないのかな?」「頑張って行ってみようか」などと声をかけてみるのは有効です。ただし、無理やり学校へ連れていったり、「どうして行かないの!」と責めたりしてはいけません。学校に行かないことを責められると、子どもは余計外に出られなくなり、心を閉ざしてしまいます。
親子とも、現状が受け入れられずに混乱したり、不安になったりして、言い争いになってしまうことがあるかもしれません。そんなときには、家族が現状を「今は焦っても仕方がない」と受け入れると、子どもは徐々に落ち着きを取り戻していきます。
受け入れて「声をかける」
「学校に行けない自分」でも、家族から受け入れてもらえていると感じると、子どもは安心し、少しずつ元気を取り戻していきます。そして、家の中で落ちついて生活できるようになり十分な時間が経過すれば、子どもはだんだんと家の中にいるのが退屈に感じるようになります。
そんな時こそ、「外に出てみない?」「こんな場所があるらしいよ」という声かけのタイミングです。外に出て一歩を踏み出し、家族以外の人と関わる機会が増えると、子どもはどんどん元気になっていきます。
子どもの状況を受け入れるのは大切ですが、1番避けたいのは「何もしないで、そっとしておく」ことです。人は何もしないでじっとしていると、心も体も不調をきたしてしまいます。部屋から外に出るのが難しい場合は、「食事だけでも一緒に食べない?」と、声をかけるなど、できることから始めてみてください。
回復としてめざす地点は?
不登校を乗り越えた先のゴールは、「学校に戻る」ことに限りません。家に引きこもるのではなく、外に出て、社会と関わることさえできればいいのです。フリースクールでも、学習塾でも、放課後等デイサービスでもいいですし、中学を卒業しているお子さんならアルバイトでもいいでしょう。
大人になった時、社会の一員として生活していくためには「自分ができる範囲で、自分の役割を果たす」という意識が必要です。学校に行けなくても、家族の役に立つように、お手伝いをするのもいいでしょう。誰とも会わないでいると、人と関わるのが怖くなってしまいます。「家から出て、何かしてみようか」と伝えてみるのも1つです。
また、将来に向けて最低限の勉強をしておくことも忘れないようにしましょう。そんな風に未来に向けて少しずつ準備しながら、学校に限らずとも、本人が外に出て、動き始める日を待つようにします。
不登校に陥ったからといって、決して「お先真っ暗」なわけではありません。単に「学校に行けなくなった」「行かなくなった」だけです。それ以上でも以下でもありません。そのように考えた上で、将来へ向けて何ができるかを考えていくことが、最も大切だと思います。
文・聞き手:きずなネット編集部