子どもにとっても、サポートをする大人にとっても、大きな課題となるのが夏休みの宿題。夏休みに宿題が出される理由は主に二つです。一つは学習習慣をつけることで、もう一つが学んだ内容を定着させること。とは言うものの、「わからないところは、どう教えればいいの?」や「自由研究や自由工作、読書感想文はどうしたらいい?」など、どのようにサポートすればよいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
今回は、夏休みの宿題のサポート方法について、カウンセラーのいしづかみほさんにお話を聞きました。
カウンセラー:いしづかみほさん
家にいるわが子が毎日自由気ままに過ごしていると、つい「宿題やりなさい!」と言いたくなる…。夏休みの最後に寝不足になって宿題に付き合うのはもうやめたい…。
そんな皆さんに参考にしていただければと思います。
夏休みの計画の立て方
夏休みの宿題の難しさを大人の仕事に例えて言うならば、「40日間リモ-トワークになり、指導者がいない中、抱えている仕事をやる」といった感じでしょうか。
それは、計画や優先順位付け、プライベートな時間との切り分けなど、相当な自己管理を求められるミッションと言えるでしょう。
夏休みの計画を立てる際に気を付けたいポイントは、以下のとおりです。
無理な計画、細かすぎる計画にしない
計画を立てる時のコツは、無理をしない、細かく決めすぎないこと。
1日で出来なかったら、次の日に2倍の量をこなさなくてはならないような計画は実行が難しいものです。3日に1日くらい、何も計画を入れていないリカバリーデイを作るようにしましょう。計画通りにいかなかった分を、取り戻せるゆとりがあるといいですね。
ノルマ制にする
宿題や学習の計画を立てる時には、「1日に〇時間やる」という時間制ではなく、「1日にこれだけやる」というノルマ制にした方がよいでしょう。机に向かうよりも、達成する体験を積むことで、「やれば終わる」という感覚が身に付きます。
やりがちなのが、スムーズに終わった時、課題を追加してしまうこと。本人が「もっとやる!」と言った場合は別として、親の側から欲張らないことが大事な点です。
子どもと家族のペースで
読書感想文や自由研究などは、何日から何日の間にやるとか、家族がお休みの日にやるとか、本人と家族のペースに合わせた計画をおおまかに立てるとよいでしょう。
また、宿題や学習のために机に向かう時間は1日のうちいつがいいか、お子さんと相談しながら決めます。
「午後は友達と遊びたい」「夜はテレビを見たい」など、本人の希望を尊重することを忘れずに。
生活リズムを整える
学校が休みだからといって、夜更かしをしたり、午前中いつまでも寝ていたり、生活リズムが乱れると、眠りが浅く、疲れがとれにくくなります。そうなると、学習に取り組む集中力もなくなってしまうでしょう。
朝は学校へ行く日と同じ時間に起きること。午前中に朝日を浴びて身体をきちんと目覚めさせること。そして、夜は睡眠環境を整えてしっかりと眠ること。
これらは学習効率を上げるためにも、計画を立てる時に考慮したい点です。
宿題への声掛けのポイント
計画通りに行かない時は叱ったり、罰を与えたりするのではなく、できた時に「できたね」とほめることを心がけましょう。
宿題のサポートというと学習そのものに目が行きがち。しかし、ご家庭でできる本来のサポートは、体調管理や日々の励まし、ポジティブな声掛けです。長期休暇でも、学校がある毎日でも、それは同じですね。
「やりなさい」「やらないと」「早くやって」の繰り返しは、お互いにしんどいもの。
「やろう」と誘う気持ちで声を掛けていきましょう。
自由研究・工作のサポート
インターネットで「自由研究」と検索すれば、役立ちそうな研究や工作がたくさん出てきますし、書店に行けば参考にできる本が平積みになっています。工作キットもいろいろありますよね。
お子さんが「やってみたい」と思うテーマに取り組みましょう。それが学年相応のものかどうかは度外視してもかまいません。
本人が「知りたい」「やってみたい」と思うこと以上の動機はありません。宿題の主体はお子さん自身です。
学校の先生に、おすすめの研究テーマや工作を聞いてみるのもいいでしょう。
また、学校や地域によっては、夏休み明けに自由研究・自由工作展を開催するところもありますので、ぜひ親子で見に行ってみてください。賞をうけたものだけでなく、全生徒の作品を展示している場合もあります。
「来年、自分もこんな研究をしてみたい」「これを真似して作ってみたい」という研究報告や作品と出合うことは、本人のモチベーションになります。
「人と違うものをやらなきゃ、作らなきゃ」と思い過ぎないことです。
学習の始まりは模倣から。真似してみる、でOKです。
読書感想文のポイント
読書感想文を書くには、まずは本選びから。
推薦図書もいいけれど、お子さんが読みたいものを選びましょう。
読書感想文を進める手順は以下のとおりです。
1.あらすじを理解する
文字を読むことが苦手なお子さんの場合は、挿し絵のたくさんある本を選びましょう。
1人で読むことが大変そうなら、読み聞かせをしてあげてもかまいません。あらすじをしっかりと捉えられるようサポートしてください。
2.焦点を当てる箇所を決める
「どんな話だった?」と質問をして、聞き取りをしてみましょう。お子さんが本の内容のどこに焦点を当てているかで、感想の書き方は変わってきます。
- 物語を分析するタイプ
- 登場する人物に心を寄り添わせるタイプ
- 出来事に心が動かされるタイプ
など。
子どもが思ったことや感じたことを、大人の感覚で書き換えるのはタブーです。
子どもがどう感じ、何を考えたかを尊重してください。そして、そのまま正直に表現することが大切です。
3.下書きをする
原稿用紙にいきなり書き始めるのではなく、書きたいことをいくつかのトピックに分けておきましょう。そのトピックごとに、何を感じたか、どんな意見を持っているのか、どう思ったかをメモしておきます。
そして、そのメモをさらに詳しく書いていきます。
「面白かった」「楽しかった」「悲しかった」
という言葉を具体的な表現に変えていきます。
ちなみに、具体的な表現が出来るようになるトレーニングは、日頃から取り組むことをおすすめします。
4.目に見えるものをなるべく詳しく説明する
「青い」「大きい」「ざらざらした」「丸い」ボール。
「白い」「ふわふわした」「ちょっと薄い紫も入っている」「空の低いところにある」雲。
といったように、色や形、手触り、サイズなどを言葉にしてみましょう。
「わくわくした」「じーんとする」「泣きたくなる」「ざわざわする」「もっとやりたいと思う」といった具合に、気持ちを言葉にしてみることも大切です。
大人がやってみて、子どもも真似をします。ぜひ、日頃から取り組んでみてください。
夏休みの体験こそ大事な宿題
課題に対して、瞬発力と集中力を発揮して1日で出来ることもあれば、コツコツと数日間かけてじっくり取り組むこともあると思います。自分のペースでどのように取り組むかを決められるのは、夏休みのいいところです。普段できない体験をさせてあげられる機会でもありますよね。
手出しや口出しをし過ぎず、「こんなことに興味を持っているんだな」「ここは助けが必要そうだな」「あ、こんなにサラッと終わりにしちゃっていい感じなの?」など。普段は見ることのないお子さんの個性を観察して楽しむチャンスです。
最後に
社会に出ると、あらゆる場面で「完璧を目指す」「100点を取る」必要はあまりないということを私たちは知っています。
けれど、学校に通っている子どもに対しては、うっかりそれを求めすぎる傾向があるのではないでしょうか。
「普段できない体験が出来るな」という気持ちで、一緒に何かをやってみましょう。精度の高い作品を作り上げるよりも、そのプロセスを楽しむことに全力を尽くしてみてはどうでしょうか?
「宿題が終わらなかったです。ごめんなさい」と、先生に謝る。もし1人で謝れなかったら一緒に謝りに行くことも、状況によってはありだと思います。
文:いしづか みほ
大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)