子供のかかりつけ医は必要?持つ理由と作り方【医師解説】

子供のかかりつけ医は必要?持つ理由と作り方【医師解説】

子供の「かかりつけ医」、持っていますか?「大きくなって、最近は風邪もひかないから」、「大きな病院の方が救急ですぐ診てくれるから」、「個人のクリニックは腕が悪いから」など。これらは、私が外来で「かかりつけ医はいますか?」と親御さんに聞いたときに「かかりつけ医がいません」と答えた方の理由の主なものです。
かかりつけ医は、なぜ必要なのでしょうか。また、良いかかりつけ医はどのように作ればよいのでしょうか。日本の医療のしくみと現状を踏まえて解説していきます。

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。
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日本の医療のしくみと現状

日本は国民皆保険制度が導入されており、基本的には誰でも受診したい医療機関を受診することができます。

日本は国民皆保険制度が導入されており、基本的には誰でも受診したい医療機関を受診することができます。日本が世界に誇るべき医療制度ですが、これが原因で患者さんが一部の医療機関に集中してしまい、一部の診療科や医療機関では医療崩壊の危機に直面しています。
そして、小児科も医療崩壊の危機に直面している診療科の一つ。患者さんが特定の診療科・特定の医療機関に偏らないように、それぞれの医療機関で役割分担をしています。

一次医療機関

いわゆる「開業医」のクリニックや診療所や小規模な病院が一次医療機関です。病気やケガなどの治療のみでなく、予防や健康管理など、地域に密着した保健・医療・福祉のすべてを取りまとめた医療を受けられます。
重症度や専門性が高い病気やケガ専門的な医療機能を持つ病院と連携して診療してくれます。

二次医療機関

地域にある、いわゆる「中規模な病院」が二次医療機関になります。二次医療は入院や専門的な診療を、一次医療機関や他の医療機関と連携して行います。

三次医療機関

より高度で特殊な、もしくは先進的な診断や治療を行っているのが三次医療機関で、大学病院、国立や県立の医療センター、大規模病院などです。高度な専門性と、先進的な技術と特殊な医療機器の整備を備えています。

結局、どこを受診すれば良い?

「より高度で専門性の高い医療を受けたいから、最初から三次医療機関を受診したい」、「全部、三次医療機関にしてしまえば、みんながより高度で専門性の高い医療をうけられるのでは?」という気持ちもわかります。
しかし、日本の医療費は窓口で支払うお金以外の多くの部分を、皆さんが納めている税金と保険料でまかなっています。つまり、医療費には限りがあるのです。
また、医療機関で働く人にも限りがあります。だからこそ、役割分担が必要になってくるのです。
そのため、基本的には最初は一次医療機関を受診しましょう。必要と判断されれば、二次医療機関、三次医療機関へと紹介されるというのが、医療崩壊を防ぐためにも必要な受診の方法になります。
夜間休日の救急診療も、各地域で一次医療機関の当番医が決められている場合には、そちらを受診することを医療機関側からはお願いしています。これはあくまで「お願い」なのが現状です。
以前、私が夜間救急をしていたときのことです。診療が終わった後、救急受診したお母さんに「次からは一次医療機関受診を」とお願いしたことがありました。その時に、「近いから、安心だからという理由で、みんなが三次医療機関を受診したらパンクしてしまうので」という表現で理由を説明していました。すると、「受診を拒否された」、「パンクするから来るなと言われた」と病院側にクレームが入ってしまったのです。
あくまで、「お願い」ベースなのです。しかし、自分の子供が重症で三次医療機関での検査・治療が必要なのに、軽症患者の対応で忙しくて受け入れられないとしたらどうでしょうか?子供達の命を守るためにも、ご協力をお願いいたします。

個人のクリニックは腕が悪い?

「個人のクリニックは腕が悪いから、大きな病院で診てもらいたい」という方がいます。結論から言うと、これは間違いです。

「個人のクリニックは腕が悪いから、大きな病院で診てもらいたい」という方がいます。結論から言うと、これは間違いです。
個人のクリニックの先生のほとんどは、開業前に三次医療機関で働いた経験があります。そこで技術や知識を磨いて開業し、かつ、開業後もいろいろな勉強会や学会等に参加して最新の知識を得る努力をされています。
一方で、三次医療機関では、まだ、小児科専門医としての資格を取得していない若い医師も勤務しています。ですので、個人のクリニックの先生の方が経験も知識も上ということはよくあります。
少し話が変わりますが、プロフェッショナルとは何でしょうか?
私のコーチングの師匠である国際コーチ連盟認定マスターコーチの谷口貴彦さんは、「技術・知識・ツール+実績+人格」であると説明されます。
これに当てはめて、一次医療機関と三次医療機関を比べると、一次医療機関は「ツール」つまり、診断や治療のための機器などは少ないかもしれません。しかし、その他の要素は三次医療機関に負けないものがあると考えます。
また、最近では二次医療機関、三次医療機関と施設利用の契約をして、クリニックの医師が二次医療機関、三次医療機関で検査や治療をしていることもあります。

受診時には「診療科」をチェック

小児科を受診する際に確認してほしいのは、クリニックが標榜している診療科です。
「○○こどもクリニック」、「○○小児科」のようにクリニックの名前に「小児科」、「こども」、「キッズ」、「チャイルド」などが入っている場合には、小児科が専門で小児科のトレーニングを受けた医師が診療しています。
「○○医院」、「○○クリニック」などが医療機関名で、診療科目に小児科が含まれている場合には注意が必要です。表示されている診療科目の一番初めに「小児科」がある場合には小児科の医師が診療していることが多いです。しかし、「内科、皮膚科、アレルギー科、小児科」や「外科、小児科」のように小児科が2番目以降に表示されている場合には、小児科以外の診療科の専門の医師が小児科も診ている場合が多いです。
最近はクリニックのホームページを公開しているところも増えています。診療している医師の経歴や専門医を確認して、小児科専門医の医師に診てもらえば安心でしょう。

かかりつけ医を持つメリット

かかりつけの小児科医は、子供達を病気だけではなく、成長をフルサポートしてくれます。

かかりつけの小児科医は、子供達を病気だけではなく、成長をフルサポートしてくれます。二次医療機関、三次医療機関の小児科外来では、日替わりで担当医が変わってしまいます。担当医が変わる利点もあるのですが、同じ医師がずっと診てくれることで、子供達のちょっとした変化にも気づいてくれます。
「いつもと何か違う」が大きな病気の発見につながることも少なくありません。日替わりの先生だと「いつも」がわからないので、見過ごされてしまうことも起こり得ます。
赤ちゃんの頃から成人するまで、ずっと同じ先生に診てもらっていると、体の病気以外の色々な相談にも乗ってくれます。私が医学部に行くことになったのも、子供の頃からのかかりつけ医の先生のアドバイスがあったからです。
高校3年生だった私はスポーツ医学を勉強したいと思っていました。高校の進路指導でも「スポーツ医学を学ぶなら体育学部」と言われていました。当時はインターネットもなかったので、大学受験案内という本で自分で調べても体育学部でした。ところが、私のかかりつけ医だった先生が「スポーツ医学を勉強したいなら医学部だよ」と教えてくれました。その一言で、私は医学部を受験することにしたのです。

良いかかりつけ医の作り方

歯科医の友人が「良い歯科医」の見つけ方・作り方を教えてくれました。それは、最初に歯石除去などをお願いして、丁寧な対応をしてくれるところに、虫歯の治療などで通った方が良いとのことでした。
かかりつけ医がないという親御さんには、私は友人のアイデアを拝借して、「予防接種や健診を利用して医師との相性を確認したら良いよ」というお話をすることがあります。信頼できる小児科医をかかりつけ医にすれば、その後、安心して子育てをすることができますよ。

文:十河 剛

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