異物誤飲の対策は?トイレットペーパー芯を通る物に注意【医師解説】

異物誤飲の対策は?トイレットペーパー芯を通る物に注意【医師解説】

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小さな子供は好奇心旺盛。特に、生後3~4ヶ月頃の赤ちゃんは、手にしたものを何でも口に入れるようになります。口の中で物の感触を確かめるこのような行動は、赤ちゃんが正常に発達している証拠です。喜ぶべきことであるのですが、何かの拍子に間違って飲み込んでしまったら大変です。
赤ちゃんが口を開けた時の大きさは、直径約4㎝。ちょうどトイレットペーパーの芯の直径と同じくらいになるため、目安として芯を通るサイズのものは気をつけていきましょう。
今回は異物誤飲について、特に注意したいものと対策について解説していきます。

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生

筆者:十河剛 (そごうつよし)
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。
動画セミナー『子供の天才性をハグくむ叱らなくても子供が勝手に動く究極の親子コミュニケーション術』

異物誤飲の恐れのあるものは?

画鋲、ピアス、パッチンどめ(髪留め)、結婚指輪、ボタン電池、500円玉など…これらは子供たちが飲み込んでしまい、私が内視鏡を使って取り出したことのあるものです。

大人の常識では「画鋲などの鋭利なものは口の中で刺さるから痛くて飲み込まないだろう」と考えます。

大人の常識では「画鋲などの鋭利なものは口の中で刺さるから痛くて飲み込まないだろう」と考えます。しかし、子供は常識の斜め上の行動をするため注意が必要です。
私の長女は、部屋の中に置いていた観葉植物の土を口の中に入れていました。長男は口の中で舌を使って何かを転がしているような様子だったので、口に指を入れて掻き出すと、ダンゴムシが出てきたことも。
プラスチックのおもちゃの部品などは、飲み込んでも害のないことが多いので様子を見ることが多いです。しかし、特に気をつけたいのは以下のものです。

竹串や画鋲など、鋭利なもの

腸壁に刺さって腹膜炎(腸の中の細菌がお腹の中に広がり、炎症が起きる状態 )につながる可能性があります。

電池類

リチウムイオン電池は、古いものでも通電して、短時間でも胃や腸の粘膜に穴を開けてしまうことがあります。できるだけ早く内視鏡で取り出す必要があります。
アルカリボタン電池では、胃酸により金属が腐食して電池の中から出てきたアルカリ性の物質が胃粘膜を傷つけます。こちらは飲み込んですぐであれば、先端にマグネットのついた特殊なチューブを口から入れて取り出すことができます。

磁石類

磁石は1個だけであれば、うんちと一緒に排泄されるのを待ちます。しかし、2個以上飲み込んだ場合には、注意が必要です。お腹の中で腸を挟む形で磁石同士がくっついてしまうと、危険です。挟まれた腸に血液が流れなくなって腸が腐って穴が開いてしまうことも。そのため、内視鏡を使って取り出す必要があります。

コイン

コインは小さなものであれば、うんちと一緒に排泄されることが多いのですが、食道に引っかかってしまうこともあります。
時間が経つと、コインで圧迫された食道粘膜に穴が開いてしまうことも。
また、食道を通過せず引っかかってしまうような大きさのコインは、小腸にも引っかかってしまう可能性があります。こちらも内視鏡などで摘出する必要があります。

PTP包装シート(錠剤やカプセルの薬をプラスチックとアルミで挟んだもの)

PTPシートを飲み込むと、角の尖った部分で腸を傷つけてしまうことがあります。また、PTPシートほど硬くはなくても、プラスチック製のシールが食道に引っかかってしまい、長期間食道に留まっていることで食道に穴が開いてしまったという報告もあります。

異物誤飲を防ぐために

こうした異物誤飲の事故を防ぐために、赤ちゃんの手が届く範囲には、飲み込みそうなリスクのあるものは置かないようにしましょう。

こうした異物誤飲の事故を防ぐために、赤ちゃんの手が届く範囲には、飲み込みそうなリスクのあるものは置かないようにしましょう。
最初は赤ちゃんの手が届く範囲だけですが、生後5ヶ月頃になって寝返りができるようになるとその範囲は広がります。
8ヶ月頃になり、ハイハイが出来るようになるとさらに気を付けるべき範囲は拡大。引き出しを開けて、中のものにいたずらするようになるのもこの時期です。
以下に、具体的に注意するポイントを3つ挙げます。

子供の手が届く範囲に置くものに注意!

子供の手が届く場所に、トイレットペーパーの芯の中(直径約4㎝以内)を通る大きさのものを置かないようにしましょう。このサイズは、子供達が飲み込める大きさの目安と言われています。床の上はもちろんのこと、子供の手が届く高さの場所には、このようなものを保管しないことです。

引き出しにはロックを!

タンス、ローチェスト、テレビ台等の引き出しなどはロックして、開かないようにしておきましょう。子供が小さい頃のわが家では、手芸用の太めのゴムを巻いて引き出しをロックしていました。今は専用の便利グッズも出ているので、そうしたものを活用してもよいですね。

洗剤等の液体は、高い場所に保管を!

通常であれば不味くて飲めないような液体も、子供達は飲んでしまうことがあります。液体等はしっかり蓋をして、子供達の手の届かない場所に保管をしましょう。
灰皿代わりに使っていた空き缶の中に入った吸い殻が浸った水を飲んでしまう、床に置いていた液体洗剤を飲んでしまう、なども救急では比較的よく経験する事故です。このような誤飲は、命に関わったり、重大な後遺症を残したりする可能性もあります。 周囲の大人の注意で、このような重大事故は防ぐことができます。

大きくなってからも油断は禁物

実は、このような危険は赤ちゃんだけではありません。もう少し大きくなると、お弁当にも注意が必要です。

実は、このような危険は赤ちゃんだけではありません。もう少し大きくなると、お弁当にも注意が必要です。
ミートボールなどを竹やプラスチックの串で刺してお弁当箱の中に入れることがありますよね。友達と楽しくお弁当を食べている時に、気づかずに串も一緒に丸呑みしてしまうケースがあります。
また、幼稚園生や小学生になっても口の中にコインやおもちゃを入れて遊ぶ子供がいます。ただし、もしそのような状態の子供を見つけても、「何やってるの!」などと急に大きな声で注意をしてはいけません。驚いた拍子に飲み込んでしまうことがあるからです。
落ち着いて声をかけて、口の中から出すように促していきましょう。
周りにいる大人が注意を払うことで、異物誤飲の事故は防ぐことができます。子供の目線に立って、安全対策をおこなってくださいね。

文:十河 剛

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