誰しも自分の子供には、健やかに成長して欲しいと思うもの。よく聞く「自己肯定感」という言葉がありますが、子育てをしていると「子供の自己肯定感が低いのでは?」と気になることもあるのではないでしょうか。
子供の自己肯定感をチェックする方法、低い原因や高めるヒント、自己肯定感が高すぎるときの考え方について解説します。
自己肯定感が低い?チェック方法
わが子の自己肯定感が高いか、低いかは、どこでチェックすればよいでしょうか?
幼少期の子供の自己肯定感の状態を正確にキャッチするのは至難の業。ただ、親として気にかけてあげたい子供の言動があります。
それは「何がしたい?」「どこへ行きたい?」「何が食べたい?」などの問いかけに躊躇なく答えられるかどうか、「好きなこと、きらいなこと」をはっきりと意志表示できるかどうかです。
なかなか意思表示ができない子もいれば(深く考えるタイプですぐに返事ができない場合は除く)、はっきりと意志表示できる子もいますよね。
特に、ネガティブな感情の表現をしたり拒否を示したりといった場面での、子供の様子は見てあげるようにしましょう。
10代になれば少しずつ、「自分の話を聞いてくれる人なんかいない」、「このグループに自分は必要ない」、「自分は嫌われている」、「自分に興味のある人なんかいない」といった考えが自覚的になります。
それが行動や言動に反映され、周りにいる人にもその子の自己肯定感の在り様が伝わりやすくなります。
子供の自己肯定感を高めるには?
自己肯定感は、自分のことを肯定できる感覚。樹木や草花に例えるならば、その「種」は誰にも等しく備わっています。人との関わりの中で太陽を浴び、水を与えられ芽を出し成長していきます。日照時間が短ければ、水を与えられなければ、その芽はか弱く、根も十分に張ることは難しいでしょう。
子供の自己肯定感を高めるために必要とされるのは、「太陽」であり「水」。つまり、ママやパパの適切な関わりです。
その関わりの中でも特に今回は、愛着の形成と生活スキルの獲得に注目して解説をしていきます。
大人の自己肯定感に関しては、大人の自己肯定感を高めるには?子育てママの心の作り方
の記事も参考にしてみてください。
愛着形成と自己肯定感
愛着とは、母子(養育者と子供)間の生物学的結びつきが発展してつくられる、情緒の結びつきのこと。
この結びつきがしっかりとなされると、親元を離れても、自己肯定感を持ちつつ他者と関わり、集団の中で自分らしくのびのびと活躍できるようになるのです。(※ボウルビィ/英1907-1990、児童精神分析学者/が提唱した愛着理論より)
母子間の生物学的結びつきとは、つまりミルクをあげたりおむつを替えたりといった行為のこと。
お腹がすけば赤ちゃんは泣いてそれを訴えますよね。おむつが汚れて不快な時も、寒いとか暑いといった環境の快不快も同様です。
その解消を求めて、自分を保護してくれる存在(主に母親)に近づいたり、くっついたり、泣いたりといったコンタクトをとります。
それに対して、ママやパパが応答し、赤ちゃんの不安を解消する。すると、赤ちゃんの欲求は満たされ、安全・安心の感覚が確保されます。
これらの繰り返しによって、赤ちゃんは「泣けば世界は応えてくれる」という『世界への信頼』と、「泣くという自分の行為で不快が解消される」という『万能感』を獲得していきます。
そして、赤ちゃんの要求に最も応えてくれる存在が、赤ちゃんにとっての安全基地(=養育者)となります。
愛着が傷つく時
自己肯定感が低くなってしまう原因のひとつは、愛着形成がうまくいかなかった場合です。
たとえばおむつが汚れた時に、文句を言いながら、またはいつまでも無視をするような対応をし続けたとしたらどうでしょう。
赤ちゃんは、『世界への信頼』も、『自己の万能感』も味わうことができません。世界は自分を無視するものであり、攻撃するものであり、自分の声はどこにも届かず、自分のはたらきかけは何の意味も持たない。そのように理解することにつながります。
自己肯定感はこうして、その芽を伸ばすことなく胸の奥にしぼんだままになってしまうというケースもあるのです。
そこまで極端な例ではないにしろ、子供の言葉や行動に、目を向け、応えているでしょうか。
「ねー、これ見て―」
「ねー、これなにー」
「ねー、聞いてー」
忙しいママやパパは、「そんな暇ない!後にして!!」と言いたくなることもあるでしょう。
100%子供のリクエストに応えることなんてとても無理!という状況もわかります。
けれど、です。
いったん手を止めて、子供たちの目を見て、なにを語っているかを聞いてみましょう。そうした時間の積み重ねの先に、自己肯定感の芯が育ってゆくのです。
何がしたいか、どこへ行きたいか、何が食べたいか、といったことについて、子供の意見をすべて聞いていては毎日の段取りが成り立たないですよね。
好きなことだけして、嫌いなことはしない、が通用しない場面も多々あります。たとえば、歯磨きなどもですね。
でも、彼らの意見を尊重することと、生活の上でしている必要な判断の折り合いをつけることは両立できます。少々ぶつかりあったとしても、子供たちの自己肯定感は簡単に揺らぐものではありません。
生活スキルの獲得と自己肯定感
成長するにつれて、子供たちの生きるフィールドは家庭から集団生活の場へと移行していきます。
愛着がしっかりと形成され、母や家族といった安全基地があったとしても、外の世界に出ることは、子供にとって勇気のいること。こうした集団生活の中で、わかりやすく自己肯定感が揺さぶられるのが、器用さやスピード感が問われる場面においてです。
自己肯定感が低くなってしまう原因のもうひとつは、生活スキルの習得の中にあります。
洋服のジッパーをあげる、靴の脱ぎ履きをする、カバンの中に持ち物を入れる、手紙を半分に折る、はさみで紙を切る、など。大人になった今、私たちが難なくやっていることが実は難しい、という子供がいます。
これらを苦手と感じている子供にとっては「とても根気の要ることをしている」という理解を持つことが大事です。
こうした子供には、愛着形成をしっかりとするだけではなく、現実的に「できることを増やす」というトレーニングが必要です。
根性で克服するのでなくて、どうしてそれが難しいのかを分析して、丁寧にやり方を教え、練習を積む。それ相応の根気が、大人の側にも必要です。
ママやパパだけで悩むのではなく、幼稚園や保育園の先生に相談して助けてもらうのもおすすめです。上達するコツを教えてください!と、率直に言ってみましょう。
慌てずひとつひとつ、工夫を凝らしながら、できることを増やしていくことがポイントです。
「ほめる」の本質
さて、生活スキルを獲得する上でさらに工夫をして欲しいのが、「ほめ方」です。
「すごいね」「うまいね」「よくやったね」といったほめ言葉にプラスひとこと!を、心がけましょう。
「何が」すごいのか
「何が」うまいのか
「何を」よくやったのか
具体的に、細かく、どの点がどのようによかったのかを言葉にして伝えるのです。
「自分で全部片づけられたなんて、すごい!」
「はさみで紙をまっすぐ切るのがうまい!」
「トイレに行きたいって、自分から言えたのがえらい!」
といった具合です。それができた瞬間にほめてくださいね。
「私、注目されている!」
「私ができることを一緒に喜んでくれる人がいる!」
そう子供が思えた時に、自己肯定感の芽はすくすくっと成長するのです。
注意する時は、どうする?
逆に、注意をする時には、行為そのものの修正を求めているのだということが伝わるように注意しましょう。漠然と、「だめ」とか「いけない」という言い方をしないこと。
どうすればよかったのかといった代案を出してあげることや、どうすればよかったのかを一緒に考えることもおすすめです。
自己肯定感が高すぎる時は?
自己肯定感が低いことを問題視する一方で、自己肯定感があまりにも高い子もいます。「うちの子、大丈夫かな?」と不安になる親御さんもいらっしゃるようです。
「うちの子、自信過剰なのでは?」「何を根拠にその自信がでてくるの?」と、わが子のふるまいに目を疑うとか。
でも、これは愛着の形成がしっかりできているからこそ、自信満々なのです。
その点で言えば、ママやパパの関わりは素晴らしいものであると言えるのではないでしょうか。
ただ、現実的にできていないことがあるのに自信満々すぎてちょっと…ということであれば、本人のセルフイメージと現実とのギャップをわかりやすく見せてあげることも必要かもしれません。
ただし、それをできれば人前ではしないこと。恥ずかしいという気持ちは、子供たちにもありますので、配慮をしてあげてくださいね。
自己肯定感を低くする場面
人前でつい、子供のことを謙遜したり、自虐的なネタとして扱ったりしていませんか?
これも、自己肯定感を低くさせてしまうことにつながる行為のひとつです。
本心とは違うわが子への評価を、無自覚に聞かせてしまわぬよう、気をつけましょう。
常に「もっとできる」と言われ続けることも、「今の自分では足りない」という意識を子供に植え付ける原因となりがちです。「ここまではできているよ」という評価をし、できていることを自覚させてあげた上で、「もっと」の話をすると良いでしょう。
最後に
本当の意味での肯定は、以下の3つの柱を軸に関わり続けることです。
- 愛着の形成の基本の基本に立ち返り、子供たちの行動に目を向け、適切な反応を返すこと。
- 今のあなたを愛していると、言葉でも、行動でも伝えること。
- その上で、彼らが成長する具体的な手伝いをすること。
これらが、自己肯定感を根付かせるポイントになります。
あるがままの自分を理解し、受け容れること。良い面も悪い面も、すべてを内包しているのが人というものですよね。
自分のことをポジティブに捉えることが「肯定」ではありません。そのまま、ありのまま、事実のまま、自己を理解し受け容れることを自己肯定というのです。
子供たちがのびのびとその才能を発揮し生きられるよう、心から祈ります。
文:いしづかみほ
大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)
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