よく聞く「地産地消」という言葉。何となく理解していても、具体的にどのような取り組みをすべきか、分かりづらいものです。日本でも広まりつつある地産地消について、メリットやデメリット、家庭で簡単にできる取り組みなど。子どもたちの食育にもつながる取り組みや、食への関心を高めるきっかけになる事例をご紹介していきます。
地産地消とは?
地域で育てられた野菜などの農産物を、そこで暮らす地元の人たちで消費することを「地産地消」と言います。
同じような意味合いの言葉や取り組みが世界各国にもあり、食文化の豊かなイタリアでは「スローフード」という考えが根付いています。韓国では「身土不二(しんどふじ)」と言い、「長く暮らしている土地で作られた食べ物を食べることがもっとも身体によい」という考えがあります。
いずれも、地元の食材や伝統的な食文化を大切にすることや、将来に伝えていくというスタイルは地産地消の考えと共通しています。
そんな地産地消のメリット・デメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
地産地消のメリット
消費者にとって:
- 地元の新鮮な野菜が手に入り、旬の野菜をおいしく食べられること
- 生産者の顔が見える安心感
- 地域ならではの農産物を知ることで地元独自の調理法や食文化を知ることができる
生産者にとって:
- 輸送コストが抑えられる
- 不揃いな野菜なども販売しやすい
- 消費者の声が直接聞ける
環境面において:
- 輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量を削減できる
地域で作られたものを地元で消費することで、環境問題や食糧問題の解決にもつながります。つまり、身近な地域の食に関心を持つことが、地球全体のエコにもなるということ。
SDGsの身近な例!親子で今日から取り組める簡単な方法とは?
でもご紹介の通り、地産地消は、SDGsの取り組みの1つとして注目されています。
輸入農産物などが環境に与えている負荷を数値化した概念に「フードマイレージ」というものがあります。
日本は輸入量が多く、各国に比べフードマイレージの数値が非常に高いことが話題となっています。(※1)
このフードマイレージへの取り組みとしても、地産地消は有効なのです。
地産地消のデメリット
消費者にとって:
- 大量生産される農産物に比べ、地元の小規模農家さんが育てるものは、価格が高くなってしまう場合も
生産者にとって:
- 広告・宣伝、販売方法など、生産以外の能力が求められる
また、地産地消の取り組みには地域差が出てしまうのも否めません。
農産物が豊富な地域は地産地消を実践しやすいものの、生産できる農産物が限られる地域では地産地消が難しい場合もあるでしょう。
地産地消、家庭でできることは?
地産地消は誰でも簡単に取り入れることができます。ここでは家庭で簡単にできる取り組みをご紹介します。
産地を確認し、地元で作られたものを積極的に買う
新鮮で旬の美味しい野菜は栄養価も高いもの。さらに地元の野菜を買えば、環境にも身体にも優しいです。
最近では、大手スーパーなどでも地元野菜のコーナーを設けているところも増えています。いつも行くスーパーに地元産の野菜がないか、ぜひチェックしてみて下さい。
そうは言っても、全てを地元産にするのはハードルが高いかもしれません。その場合は、外国産のものより国産のもの、近い県のものを選ぶなど。少しずつ無理なく生活の中に取り入れてみるのも方法の一つです。産地を知るのも、地産地消の取り組みへの大きな一歩と言えるでしょう。
ファーマーズマーケットや産直市場を利用する
地元産の食材が豊富なファーマーズマーケットで買い物をするのも地産地消につながります。その地域ならではの伝統野菜や伝統食が出回ることも多く、地元のことを知るチャンスになりますよね。
さらに直接生産者の方とやり取りすれば、生産者の想いや苦労も学べます。子どもと一緒に、食べものへの関心が高まるのではないでしょうか。
産直市場では、販売している野菜を使ったレシピが紹介されていることもありますよね。
今まで使ったことがない野菜や旬の野菜を美味しく調理する方法を知るきっかけにもなります。
いつもの献立に、新たなレパートリーが増えるかもしれませんよ。
地元食材を使ったレストランを選ぶ
外食をする際も、地元の食材を積極的に利用しているレストランを選びましょう。
また地域の郷土料理を食べることも、地産地消につながります。
外食を通じて、地元の食文化を支える取り組みですね。
地域のイベントやグリーン・ツーリズムに参加する
地域の自然や食文化にふれるイベントやグリーン・ツーリズムは、地域の魅力を再発見できる機会です。地域の人々と触れ合うことで地域を支えることができますよ。
地元の特産品を加工したお土産を買う
地域の特産品を加工した商品が、お土産などで売られていますよね。
そういった商品をお土産にすることで、地元のブランド力の向上や、地域経済の活性化につながります。
子供と取り組み「食育」の一環に
食育とは
「食育」と聞くと、子どもと一緒に料理をする、子どもに食の大切さを教えることと思われる方も多いかもしれません。どれも正しい回答ですが、食育の根本にあるのは、大人も子どもも食を通して健やかな心と身体を育むことです。
2005年より「食育基本法」が制定され、食育は全国的な課題として位置づけられています。
【食育推進基本計画 5つの重点課題】
- 若い世代を中心とした食育の推進
- 多様な暮らしに対応した食育の推進
- 健康寿命の延伸につながる食育の推進
- 食の循環や環境を意識した食育の推進
- 食文化の継承に向けた食育の推進
※第三次食育推進基本計画より
食育基本法の中でも、若い世代や子どもたちに対する食育は心身の成長や豊かな人間性を育むために欠かせないものだと言われています。(※2)
食べることは生きること、ただ空腹を満たすためのものではないはず。小さいころからの食習慣は健康づくりの基礎です。
食育については、おうちで食育!忙しいママでも手軽にできる方法は?の記事もぜひ参考にしてみてください。
地産地消を知る食育の工夫
子どものためにと考えていても、お金や時間、手間がかかると負担になってしまいますよね。
ここでは親子でカンタンにできる、地産地消を学ぶ食育の方法や事例をご紹介します。
買い物で産地表示を確認する
普段の何気ないスーパーでの買い物の中には、食育のヒントがたくさん詰まっています。
「このお魚はどの海から泳いできたんだろう?」
「この野菜はどこの県からやってきたのかな?」
産地表示を見ながら子どもに問いかけてみるのもいいですね。
家に帰って地図を広げて確認するだけでも食に関してたくさんのことが学べます。毎回ではなくても、継続していくうちに子どもの食材を選ぶ力「選食力」にもつながります。
スーパーに並ぶ食材を通して、日本だけでなく世界との繋がりを知ることもできますよ。
家族みんなで楽しく学んでいきましょう。
作物を育てて食への関心を高める
いつも何気なく買っている野菜は、子どもたちにとってキレイで大きい野菜が当たり前になっているかもしれません。
「人参」は成長した「人参」しか見たことがない子も珍しくはないかもしれませんね。
作物を自ら育てることで、その成長過程を身近に感じ、収穫までの喜びや楽しさ・大変さを学ぶことも食育の一環です。
実際に育てることで、スーパーなどで作物を見たとき、どこの土地で育ったか、どうやって運ぶかのイメージもつきやすくなるはず。
野菜嫌いの子どもも、自分で大切に育てた野菜は美味しく食べられることもあるでしょう。
食や自然との関わりに興味を持つことで、作物の命の尊さを知り、優しい心を育むきっかけにもなるはずです。
そうはいっても、野菜を育てる畑も庭もない・・・という方に。最近では、マンションのベランダなど、小さなスペースでできる家庭菜園も人気です。
気になる方は、ホームセンターの家庭菜園コーナーなどをチェックしてみてくださいね。
小学校での取組み例
新潟県にある大手町小学校では、「ある日、食糧の輸入がストップしてしまったら」という設定で、宿泊体験学習が行われているそう。(※3)
小学5年生の子どもたちが、自分たちで作ったお米や野菜だけを食べて過ごし、自給自足の生活を体験します。
この取り組みを通して、日本や世界の食糧問題を自分ごととしてとらえ、食べもののありがたさを実感。体験学習の後は、給食を残す児童が少なくなるのだそうです。
なかなか家庭では難しい取り組みも、周りの友達と一緒に考え乗り越えることで、食に興味を持つきっかけに。食べること、生きることに向き合える素晴らしい体験学習だといえます。
最後に
地産地消は「地元の野菜を食べる」という意味だけではありません。
身近な食材を大切にすることを通じて、食べることの大切さや命の尊さを身に付けるきっかけにもなります。
また、自分が暮らす地域を知ることや、日本の食に関心を持つことにもつながります。
地域で地域を守っていく、その広がりを大切にしていきたいものですね。
参考
※1フードマイレージ:農林水産省
※2食育基本法・食育推進基本計画等:農林水産省
※3平成25年度食育の取組紹介:北陸農政局
文:中村美帆
出産を機に金融機関を退職後、カラダとココロの健康をテーマにヨガ講師・おやつ講師として活動。地産地消にこだわった親子おやつ教室や児童施設でのキッズヨガ教室など子育て支援にも携わる。
また、地元のお茶農家と連携したお茶ブランドTEA BASE「三重県産デカフェ茶」の企画販売を手掛け、地域で地元経済を応援する仕組み作りを目指して、多方面にて三重の魅力を発信中。三重県出身。二児の母。
URL: https://teabase.stores.jp/
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