日常的に口が開いていることを「お口ポカン(口唇閉鎖不全)」と言います。お子さんの様子を見ていて、気になったことはありませんか?新潟大などが全国規模でおこなった調査によると、お口ポカンの子どもは約3割にものぼります。3歳から12歳までを対象に行った調査では、年齢が上がるにつれて「お口ポカン」の割合が高くなっているとのこと。今回は、子どもの口が開いてしまうことでの問題点や改善するためのトレーニングについてご紹介します。
子どもの「お口ポカン」とは?
「お口ポカン」とは、文字通り、お口が「ポカーン」と開いている状態のこと。日常的に口が開いている状態は、専門用語で「口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)」と言います。マスクで息苦しいことや、鼻づまりも「お口ポカン」に影響が。ここ数年、いつも口が開いている子どもが増えているそうです。
「お口ポカン」は、口呼吸をひき起こしてしまいます。口呼吸をしているサインは、
- 唇がうまく閉じられない
- 口がよく乾く
- 口を開けて寝ている
- のどを痛めやすい
- 強い口臭がある
- 鼻が詰まりやすい
- 食事中、クチャクチャと音を立てる
などが例に挙げられます。
人間の本来の呼吸は「口呼吸」ではなくて、「鼻呼吸」です。鼻呼吸では鼻毛や粘膜がフィルターとして機能して、異物の侵入を防ぎ、鼻水と一緒に排出します。空気の温度や湿度を調整できるのも、鼻呼吸のメリットだそうです。
口が閉じられないことで、どんなデメリットがあるのでしょうか?口呼吸によるトラブルも合わせて、下記で見ていきましょう。
「お口ポカン」で心配されること
口の乾燥で雑菌が繁殖!虫歯になりやすい
口で呼吸をしていると、喉が空気にダイレクトに触れて、喉が渇きやすい状態。唾液が乾いてしまった口の中では、虫歯や歯周病になりやすくなります。唾液には自浄作用があり、口の中を洗浄・殺菌する働きがあります。口臭が強くなるのも、口が乾いて細菌が増えることが原因と言われています。
細菌が直接体内に侵入!風邪をひきやすい
「鼻呼吸」は、外部から侵入するホコリやウイルスを、鼻毛がフィルターとなってブロックします。「口呼吸」はそのフィルターがない状態。つまり、ホコリやウイルスが喉につきやすく、風邪をひきやすくなります。また慢性的なアレルギー体質にもなりやすいそう。健康を保つには、口を適切に閉じることで、喉や口の中に湿度を保つことが大事なんですね。
舌で歯をプッシュ!歯並びが悪くなりやすい
本来、口を閉じている時は、舌は上あごにぴったりくっついています。ですが、その位置よりも、口呼吸で舌が下がった状態が続くと、出っ歯になることも。下に降りている舌で歯を押し出してしまうためです。
集中力の低下をひきおこしやすい
お口ポカンの状態では、舌が喉の奥に落ち込みやすい傾向に。寝ている時に舌が気道をふさいでしまうことで「いびき」の原因や、寝ている間の酸素の取り込みが少なくなってしまう可能性も。良質な睡眠がとれない結果として、集中力低下や学力低下も心配されます。
顔がゆがむ!?ぼけっとした顔になりやすい
子どもの頃の口呼吸で、顔面の成長にも悪影響が。鼻や口まわりの筋肉が鍛えられず、たるんだ印象になってしまうそう。「唇が上にめくれる」「頬にしまりがなくなる」「顎がなくなる」など、顔立ちが変わる恐れもあります。
口が開いてしまう理由は?
いつもダラーン!口まわりの筋力が弱い
口の筋肉や下の筋肉が十分に発達せず、口を閉じるための筋力が弱い場合も。口を閉じてもキープするのが難しく、口元が緩んでしまいます。舌が常に下がった位置にあるのも、口が開きっぱなしになる原因のひとつです。
鼻呼吸が息苦しい!アレルギー性鼻炎・鼻づまり
アレルギー性鼻炎や蓄膿症が続くと、鼻呼吸ができず、口が閉じられない状態に。口呼吸の癖がついてしまいます。
口呼吸の慢性化に!猫背で姿勢が悪い
猫背だと、顔が前に突き出て、あごが下に降りてしまう姿勢に。口が開きやすくなります。姿勢を正しく保つことも大切です。
口を閉じる!トレーニング方法
子どもがテレビを見たり、ゲームをしたりしている時、気がつけば「お口ポカーン」。子どもは無意識に口を開けているので、自分ではなかなか気がつきにくいでしょう。いつ見ても口が開いているようなら、ママから「お口が開いているよ!」と声をかけてみて。
ただ、いつも注意されてばかりだと、子どもも嫌な気持ちになってしまいますよね。
下記では、口を閉じるための対策とトレーニング方法をご紹介します。
「あいうべ体操」をやってみる
口を大きく動かすことで、舌と唇の筋肉が鍛えるトレーニングです。「あー」と上下に口を大きく、「いー」と口を横に、「うー」と口を突き出して、「べー」と舌を突き出す。1セット4秒程度、3分間を目標にトライしてみましょう。お風呂に入りながら、子どもと一緒にやってみてもいいですね。
「ベロ回し体操」をやってみる
口の中で大きく円を描くように、舌を動かす「ベロ回し体操」。口まわりの筋肉が鍛えられるだけではなく、ほうれい線を目立たなくさせる効果も期待できるそう。ママのためにも、子どもと「ベロ回し体操」を習慣に取り入れてもいいかも。
甘くないガムでガムトレーニング
口を閉じて、両方の歯でバランスよくガムを噛みます。舌先を使ってガムを丸めたり、平らにしたりすることで、口まわりの筋肉が鍛えられるそうです。
風船でトレーニング
風船を膨らませることで、口まわりの筋肉を鍛えられます。風船を膨らませるのが難しい小さな子どもの場合、吹き戻しやピロピロ笛で代用してもいいでしょう。
専用のトレーニング器具を使う
口まわりの筋肉を鍛える、子ども用の専用器具も市販されています。歯科医院などでおすすめしているものもあるようなので、相談してみてもよいかもしれません。
口呼吸の防止テープを使う
誤飲の心配がないように注意が必要ですが、防止テープが唇を閉じる習慣づけに役立ちます。口呼吸防止の専用のテープのほか、低刺激タイプのテープを使って、口を閉じます。
食事・飲み物に気をつける
食事をよく噛んで食べるようにします。食材を大きめに切ると、噛む回数が増えて、口まわりの筋力アップに。そして、冷たい飲み物は舌の位置を下げやすくすると言われる一方で、温かい飲み物は舌の位置を上げる効果があるそう。冷たい飲み物を避けるのも、ひとつの手です。
最後に
これまで見てきたように、子どもの「お口ポカン」は口呼吸を習慣化させて、さまざまなトラブルの原因に。また、口まわりの筋肉が発達できていないと、大人になっても口を閉じるのが難しくなるかもしれません。子どもと一緒に口まわりの筋肉を鍛えるトレーニングをし、家族で「お口ぽかん」を改善できるようにしていきましょう。
※当サイトにおける情報の提供は、診断・治療行為ではありません。鼻づまりがひどい場合は耳鼻咽喉科、歯並びを治したい場合は矯正歯科など。必要に応じて適切な医療機関での受診をおすすめします。
文:林 日向子