子ども二人の家庭、三人以上の家庭では、子どもにかかる教育費は安くはなく、家計の負担も大きいもの。今現在、子どもが複数人いて「貯金ゼロ」の場合、なるべく早く教育費の準備に取り掛かりたいところです。
今回は、教育費や貯金でお悩みの方に、教育費の貯め方や家計見直しのコツについてご紹介していきます。
貯金なしからの家計見直しのコツ
貯金なしから子ども二人分、三人分の教育費を貯めるには、家計の見直しが欠かせませんが、ポイントは家計の中のちょっとした工夫。
家計見直し、というと食費や光熱費などを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、無理に食費を制限したり、光熱費に過敏になり過ぎたりして、家庭内がギスギスしてしまうのは避けたいもの。
無理せず節約し、無理なく教育費の準備をするには、まずは家計の「仕組みづくり」が重要です。
「仕組みづくり」は優先順位づけ
みなさんはお給料が入ってきたらどのように使っていますか?
普通預金に入っているお金からなんとなく食費や光熱費、クレジットカードの請求分を支払って今月分もおしまい、という流れになっていませんか?
それが、貯まらない原因かもしれません。
毎月の収入と支出の関係を「パン工場」に例えて解説します。
収入:今月分の出来上がった「パン」
支出:出来上がったパンを振り分ける「お客さま」
みなさんなら、出来上がったパンをどこに振り分けますか?
パンの数は決まっています。みなさんがパン工場の責任者なら、振り分ける前にパンの数を考え、「大事なお客さまに振り分けることが出来なかった…」なんてことがないように気を付けますよね。
そのためにはどんな行動が必要でしょうか?
適切に振り分けるためには、まずは優先順位をつけなければなりません。
まずは優先すべきところに、パン(=お金)を振り分ける仕組みを作ることが第一です。
よく見るとそれほどパンの数は必要ないお客さまもいるかもしれません。
優先順位をつけることで、自然と不要な出費も少なくなるでしょう。
「今まで教育費が貯められなかった」という方は、これまで教育費の優先順位が低かったのかもしれません。
ぜひ「教育費」の優先順位を上げてみてください。
まずはお給料が入ったら、教育費として貯めたいお金を先に別口座などに振り分けます。
貯めたいお金をまず先に抜いておくことで、気づいたら今月は貯金が出来なかったという事態を避けられるはずです。
先に貯金に回してしまったら「生活費が足りない!」という場合は、貯金分から少しだけ回すようにします。
これを繰り返し、今の生活の中で無理なく貯金できる適切な貯蓄額を見極めていきましょう。
仕組みができたら「節約」を考える
仮に貯められる金額が少額だとしても、少しでも貯金できたという肯定的な感覚が大切です。
この方法でも毎月の収入から貯めるのが難しい方は、児童手当を貯金に回してみてください。定期的にまとまった金額が入ってくる児童手当は貯金しやすく、貯まった金額を将来の学費などに充てると先々の家計もラクになります。
家計見直しの基本は、貯めるための仕組みづくりです。教育費の優先順位を上げる作業が出来たら、その後のステップとして固定費や食費などの出費を抑える工夫をしていきましょう。
食費は、子どもが成長するにつれ上がっていくものです。
買い物の回数を減らす、一週間に使う食費の金額を決めるなど、家庭内のルールを決めて節約を心がけてみて下さい。
家計の見直しをするにしても、子どもにどのくらい教育費がかかるのかは気になりますよね。
次章では、教育費の目標と貯め方をご紹介します。
貯金ゼロからの教育費の貯め方
「子育てに追われて将来の貯蓄のことまで考えられない」
「今の生活を維持しながらどうやって貯めていったらいいか分からない…」
そんな方が教育費を貯めるにあたり、考えたいのは目標です。
大学入学までに300~400万円を目標に
いつまでにどのくらいの金額を貯めておくべきかを考えておきましょう。子どもたちの年齢や進学先にもよるものの、時期の目安はやはり最も教育費がかかる大学入学時です。
この時までに大学4年間分を準備しておく場合、必要な費用はおよそ300~400万円です。
仮に、子どもが小学校に入学する6歳から12年間で300万円を二人分準備する場合。毎月およそ42,000円を大学資金として貯めていかなければなりません。
(計算式:300万円×2人分=600万円、600万円÷12年÷12月=41,670円/月)
児童手当の支給額を全額教育費に回せば、月々の自己負担は22,000円です。(児童手当が1万円支給の家庭の場合)。
「ちょっと我慢すれば貯められそう!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただこの金額はあくまで目安です。
あまり平均額にこだわらず、「わが家はひとまず100万円」など、家庭内で無理のない範囲で、まずは教育費の貯金を早めに始めましょう。
大学費用は、入学時にまとまった費用が必要ですし、授業料は半期ごとの支払いの場合が多いものです。支払い月に、まとまった資金が必要になります。
急な資金繰りに困らないためにも、大学入学までにある程度必要な金額を準備しておくことが大切です。
高校までの教育費もかかる
この貯金は、あくまで大学費用の貯金です。高校までの教育費は、貯金と並行して毎月の収入の中から支払っていかなければなりません。
毎月の給食費をはじめ、習い事の費用や部活動費、私立の場合は授業料も、毎月支払うお金です。
小中学校までは教育費が少ないとはいえ、流れ出ていく教育費がある中で貯めていかなければなりません。
子どもにかかる全体の教育費については、後ほど詳しく解説します。
無理しない教育費の貯め方
貯める金額が決まったら、その後の貯め方を決めましょう。まずは、教育費貯金用の口座を、生活費とは別で準備します。
別管理で貯めて、生活費と混同しないようにしましょう。
教育費の貯蓄方法は、主に3つです。
【教育費の貯め方】
- 普通預金・定期預金
- 学資保険
- 投資信託などの運用
普通預金・定期預金
預金として貯めるのであれば、普通預金や定期預金など種類は問いません。
ただ、これらは、管理しやすい一方、お金を下ろしやすいため使ってしまう危険性もあります。
学資保険
預金以外の貯め方として、学資保険などの保険の機能を活用する方法もあります。
毎月一定額が口座引落しされるので、自分から行動をしなくても自動的に貯まる仕組みです。
保険の場合、支払っている途中での解約は払込金額を下回るケースが多いものです。つまり、解約しづらいのが難点です。
一方、学資保険に病気やケガの保障が備わっていたり、親や子どもの万一の際に保険金が出たり手厚い保障が付加されていたりする商品も最近は出てきています。
学資保険を検討する際は貯蓄性か保障性か、シミュレーションや見積もりを比較して考えてみて下さい。
どちらを重視するかで保険料も大きく異なります。
投資信託などの運用
コツコツ貯めながら増やしていきたいという方には投資信託もおススメです。安定した投資対象を選べば、値動きの幅が抑えられ、長期的に運用ができます。
ただし解約時に必ず増えるという保障はありません。まずは貯蓄額のうち一部を投資信託に充てるなど、少額から始めて様子を見ましょう。
投資信託の場合、NISAを活用することで運用益が非課税となるメリットもあります。
その他の貯蓄方法と併用するのがおススメです。
これらの方法を試しても、どうしても家庭では大学資金が足りない場合もあるでしょう。
その際には、奨学金制度や教育ローンなどの選択肢もあります。
子どもの年齢が大きければ、進学について子どもとしっかり話し合う時間も大切にしていきたいですね。
次章では、幼稚園から大学までの教育費をご紹介します。
子ども二人の教育費はいくら?
文部科学省等の調査によると、学習塾などの学校外費用や給食費を含めた学習費について、幼稚園~大学までの教育費用は全て国公立の場合でも約800万円かかると言われています。(※1、※2、※3)
仮に、幼稚園から大学まで全て私立の場合だと約2,200万円かかります。
公立か私立かで金額にかなりの差が出ますが、低く見積もっても、子ども二人だと1,600万円以上かかることになります。
子ども一人に2,000万円以上なんて…と思うかもしれませんが、2,000万円を超えるのはオール私立の場合です。
また、これらの教育費の中には学習塾などの習い事費用も含まれているため、塾に通わない場合は、学校外の費用はこれよりも抑えられるはずです。
実際に、私立・公立の進学率を比べてみると、幼稚園では全体の9割程が私立園です。
一方小学校や中学校では、9割以上が国公立に通っています。高校になると、公立は全体のうち約7割。大学は、国公立が3割です。大学は国公立であっても、自宅外からの通学になると下宿代がかかります。
ただ高校や大学は、補助金や助成金の制度があります。対象世帯であれば、費用負担が実質無償になる場合もあり、教育費の負担もぐっと軽くなります。
高校の無償化の条件は、高校の授業料、無償化の所得制限は?実質いくら準備すべき?の記事で詳しく解説しています。
【年間にかかる教育費の目安】
単位:円
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 223,647 | 527,916 |
小学校 | 321,281 | 1,598,691 |
中学校 | 488,397 | 1,406,433 |
高校 | 457,380 | 969,911 |
大学 | 666,700 | 1,373,900 |
<平成30年度子どもの学習費調査より/文部科学省>
<平成30年度学生生活調査結果より/独立行政法人日本学生支援機構>
余裕を持った計画を
子どもの成長に応じて、お金が必要な時期がやってきます。さらに子どもの成長に合わせ、住宅購入や車の買い替え、場合によっては転勤による引越しなど、さまざまなライフイベントが重なることもあるでしょう。
このような時期はどうしてもお金がかかりますが、「貯められない時期」として認識し、貯金の計画を立てておくと安心です。
例えば、子どもが二人いる家庭でお金がかかるタイミングとして、
- 第二子の出産前後
- 住宅購入時、引越しの前後
- 子どもの学校入学を迎える年
- 塾などの習い事に通い始めたとき
- 高校や中学受験・塾の集中レッスンに通う年
- 大学受験の年
などがあります。
今これらのタイミングに重なっている、あるいはもうすぐ重なるという世帯の場合は普段の生活費に加えてまとまった出費があるでしょう。貯金を取り崩し、貯金を使ってしまうケースも少なくありません。
出費のかさむ時期ではあるものの、子どもの教育費には手をつけずに毎月のお金の流れの中でやりくりをしましょう。
参考
※1 平成30年度子どもの学習費調査/文部科学省
※2 平成30年度学生生活調査結果|独立行政法人日本学生支援機構
※3 令和2年度学校基本調査/文部科学省
文:中村美帆
出産を機に金融機関を退職後、カラダとココロの健康をテーマにヨガ講師・おやつ講師として活動。地産地消にこだわった親子おやつ教室や児童施設でのキッズヨガ教室など子育て支援にも携わる。
また、地元のお茶農家と連携したお茶ブランドTEA BASE「三重県産デカフェ茶」の企画販売を手掛け、地域で地元経済を応援する仕組み作りを目指して、多方面にて三重の魅力を発信中。三重県出身。二児の母。ママファイナンシャルプランナー。
URL: https://teabase.stores.jp/
Instagram : @mihocoto
あわせて読みたい